健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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5健保連海外医療保障 No.134在宅援助・支援サービスの主な提供主体は、公的組織、アソシアシオン、企業である18)。高齢者の自宅での身の回りの世話や地域における移動支援といった在宅生活の維持を促進する対人サービスを提供するアソシアシオンや企業は、サービスの種類や提供様式に応じて、県の許可(autorisation)や国の承認(agrément)を受けることが求められる。家事やDIY、ガーデニングなどを行う対人サービスについては、税制上の優遇を受けるための届出のみでよい。在宅看護については、開業看護師や在宅入院組織が提供するもののほか、在宅看護サービス事業者が提供する在宅看護サービスがある。在宅看護サービスは、保健医療系のサービスに位置付けられ、わが国でいう訪問看護事業に該当する。自律の喪失の予防や、不要な入院の回避、入院後の迅速な在宅復帰、要介護高齢者居住施設(EHPAD)などへの施設入所を遅らせることなどを目的とするもので、2002年の社会福祉および医療福祉の改革法19)によって公衆衛生法典に位置付けられた。在宅看護サービスは、医師の処方により実施されるもので、60歳以上で病気の人や自律の喪失状態の人、または障害や慢性疾患のある60歳未満の人が利用できる。在宅看護サービスは、看護師や看護助手(aide-soignant)で構成されるチームで提供される。その内容は、身体の衛生管理、身支度など日常生活に必要な基本行為の支援、バイタル測定、健康状態の管理などが行われる。それ故に、ホームヘルプサービスとは一線を画する。また、在宅看護サービスは、理学療法士、医師などの医療関係者との連携も行う。在宅看護サービスを利用する場合、利用希望者が事業者に直接連絡をして申し込むことになる。当該事業者が受入可能な場合には、在宅看護サービスを行う看護師が自宅でニーズ評価を行い、サービス提供の計画を提案する。在宅看護サービスの利用料は、加入している公的医療保険により全額カバーされる。(3)多目的在宅援助・ケアサービス(SPASAD)多目的在宅援助・ケアサービスは、在宅看護サービスと在宅援助・支援サービスの機能を併せもったサービスである。このサービスを利用することで、利用者は2つのサービスを別々に利用することや、利用の際の調整をする必要はなくなる。(4)在宅入院(HAD)多目的在宅援助・ケアサービスでは、在宅看護サービスを利用する場合には、医師の処方が必要となるが、在宅援助・支援サービスの利用では必要ない。多目的在宅援助・ケアサービスの費用は、在宅看護サービスの部分は公的医療保険で全額カバーされ、在宅援助・支援サービスの部分は本人負担となるが、APAや社会扶助の介護サービスに関する給付により費用の全部または一部がカバーされる。在宅入院は、病院での入院を回避または短縮しながら、ケアの継続性と患者の安全を確保するものであり、在宅入院組織の医師等が多職種による医療をコーディネートして、患者の自宅で最善の医療を提供する体制である(公衆衛生法典 D.6124-194条以下)。在宅入院の発想は古く、1950年代にはすでにみられ、1962年のラロック報告でも言及されている20)。かつては、在宅入院は病院サービスの延長として、入院の代替的なケア組織とされていたが、現在では、在宅入院組織それ自体が公衆衛生法典上の医療施設に位置付けられている。在宅入院は、高齢者のみを対象としているのではなく、あらゆる年齢層の患者を対象とする。主なものとして、がんの化学療法、緩和ケア、複雑な処置・特殊なケアなどを取扱う。在宅入院は、提供されるケアの複雑さと頻度、医療密度の点において、在宅看護サービスや多目的在宅援助・ケアサービスなどのサービスとは異なる(公衆衛生法典 R.6121-4-1条)。また、在宅入院を行える場所の範囲は比較的広く解されており、患者宅のほか、高齢者向けの居住施設や医療社会福祉施設等でも利用することができる。(2)在宅看護サービス(SSIAD)

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