在宅ケアと地域連携健保連海外医療保障 No.1344間の非営利団体であるアソシアシオンなどの民間団体の割合が8割を超えていた。こうした活動は、在宅維持政策の中核となり、ラロック報告につながった。1962年に発表されたラロック報告12)は、在宅生活の維持を中心とする高齢者政策を提言し、その後の高齢者政策に大きな影響を与えた報告として評価されている。ラロック報告は、高齢者の職業活動の維持、収入、居住、福祉など多岐にわたる課題を取り上げているが、同報告は、社会における高齢者を基本的な視点に据えていた。例えば、職業生活との関連では、環境と生活条件を高齢者の身体的・精神的状態に適応させることが必要であるとし、高齢者の生活との関連では、社会からの孤立や排除に対抗するために、高齢者を他の世代の人と触れあえるようにし、できるだけ長く、地域で自立した生活を送り続けることができるよう、高齢者を社会の中に統合することが必要であるとしていた13)。高齢者ケアについては、社会救済や旧態依然としたオスピスへの収容という枠で捉えられてきた高齢者ケアを抜本的に改め、在宅生活の維持を高齢者政策の基本に据えることとした。こうして、ラロック報告は高齢者の新しい捉え方を構築し、困窮している高齢者を対象とした社会扶助から、高齢者全体を対象とした社会扶助と医療・保健福祉に移行することを提唱した。ラロック報告は、高齢者の希望を満たし、かつ社会との関係を維持する方法として在宅生活の維持を位置付けた14)。今日的理解をすれば、要介護状態にあっても高齢者が社会において主体的な地位を維持し続けることができるようにすることが在宅生活の維持の考え方の要であるといえる。ラロック報告で示された在宅生活の維持の考え方は、無償の家族介護に大きく支えられていたという側面がありつつも、その後の介護制度の発展を通じて、今日の高齢者政策の中に連綿と受け継がれ、2015年のASV法でも、在宅生活の維持が高齢者政策の中心に据えらえている。2020年のAPAの受給者約132万人(60歳以上の高齢者の約7%)のうち、約6割が自宅で生活し、約4割が施設に入居している15)。また、比較的軽度または非該当であるGIR5と6の人を主に対象とする自宅と施設の中間にある高齢者住宅は展開途上にある。人口の高齢化が進んでいるため、要介護状態の人の割合は増加傾向にあるが、高齢者全体で見ると、一般的に日本でいう後期高齢者になるまでは自立している高齢者が多い。APAの受給者は、75歳から急上昇し、日常生活動作(ADL)の制限が現れ始める平均年齢は83歳前後である。今後、高齢者に占めるAPA受給者の割合は、2040年には8.5%、2060年には10%に増加すると予想されている16)。在宅APAの受給者をみると、約9割が定期的に支援を受けているが、支援の提供者は、専門職と周囲の人が混在しているかたちが一般的であり、専門職が提供する週あたりの支援時間は限定的である17)。フランスにおいて在宅ケアを担うサービス提供主体は様々あり、複雑な構造を呈している。主として、社会福祉・家族法典を根拠にする福祉系サービスと、公衆衛生法典を根拠とする保健医療系のサービスに区分できる。在宅援助・支援サービスは、福祉系サービスに位置付けられ、わが国でいうホームヘルプサービスに該当する。在宅生活での支援を行うことで、高齢者の自律の促進、在宅生活の維持を目的としている。就寝・起床、トイレ、食事、買い物、食事の準備、洗濯・掃除、食事の宅配、外出やレジャー活動の支援、社会生活の維持などが行われ、援助や支援の内容は幅広い。これらにかかるサービス費用は、APAや社会扶助の介護サービスに関する給付により費用の全部または一部がカバーされる。(1)在宅援助・支援サービス(SAAD)2. 在宅ケアの現況3. 在宅ケアの提供体制
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