健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
67/82

64表1  ミドルファート・コムーネの 在宅認知症高齢者へのサービスンと家庭医との間に、認知症の連携協定を結んでいる。協定の中では、認知症の人をサポートしていくうえで、3者の役割分担が明確化されている。この協定に基づいて、医療と介護の連携がスムーズに行われている。特に認知症ケアサービスについてみると、ミドルファート・コムーネには、認知症の人は約700人(男性240人、女性460人)いる(Larsen 2015)。重度の認知症高齢者のための住居として、高齢者センターに認知症棟がある。そのほか、在宅生活を送る認知症高齢者のためのサービスは表1のようなメニューがある。②一般デイセンターは、軽度で他の利用者と一緒に活動できる人が対象である。③認知症デイセンターは、1ユニット6〜7人で、職員が2人程度つく。重度な認知症でより手厚いケアが必要な場合には、マンツーマンで対応することもある。④コロニーヘーヴェとは、デイセンターから車で15分ほど離れたところにある屋外庭園で、最大6人の認知症高齢者と職員2人が日中過ごすというサービスである。デンマーク人は、屋外で外気に触れることはとても重要である、という信念を持っており、こうしたサービスは近年、流行している。認知症の高齢者にも、外で落ち着いた雰囲気の中で、穏やかに過ごせると評判がいい。⑤木曜カフェは、日本でも行われているいわ①24時間訪問介護・看護②一般デイセンター③認知症デイセンター④コロニーヘーヴェ(屋外庭園での日中滞在)⑤木曜カフェ⑥認知症の人へのエクササイズ⑦家族グループ出所:Larsen(2015)の資料をもとに筆者作成ゆる“認知症カフェ”であり、認知症の本人や家族が一緒に集ってお茶を飲むなどして過ごす場である。認知症コーディネーターが主催する。⑥エクササイズは、認知症の人が身体機能を維持したり、体を動かすことで脳にもいい影響を及ぼす、との理由から、近年デンマークでは推奨されている。⑦家族グループとは、日々負担を強いられる家族同士が連携できるように、ネットワーク化を進め、時には家族に認知症に関する講習会も開く。これらのサービスは原則として、認知症と診断後、認知症コーディネーターが訪問して状況を調査し、その報告を受けてケアプラン作成担当者であるヴィジテーターの訪問、審査を経て、ケアプランが作成され、必要性に応じて提供される。日本にはない職種である認知症コーディネーターの教育と職務について紹介する。デンマークでは1980年代の終わりころから、認知症高齢者のケアの現場では、身体介護を中心とする従来の介護方法では十分支えきれないことを認識し始め、専門的な認知症ケアの必要性が問われ始めていた。同じころ、「精神病院の改革により、認知症患者を地域に戻そうとしていた精神科の医師たちは、家族や介護職向けの認知症教育に取り組み始めていた」とされ、「介護職等の『知りたいニーズ』と、病院改革を遂げたい医療側の想いが一致したことで、多くの介護職が様々な形での認知症専門教育を受ける機会に恵まれていった」(山梨 2010)。こうした背景の中で、「認知症コーディネーター」という認知症に関する現場の専門家を養成する教育がミドルファート・コムーネにおいて1992年からはじまった。主な対象は、看護師あるいは社会保健介護士、作業療法士などの有資格者である。現在の教育時間は、短期間で取得するコースは、プロジェクト作成も含めて175時間。また、週1日6時間の講義を年間28日間、(4)認知症コーディネーター

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る