63図3 デンマークの高齢者ケアシステムと自治体、ボランティア団体などとの関係(3)地域連携における各医療職の役割についてデンマーク中部に位置するミドルファート・コムーネの高齢者ケアシステムの事例を示す。ミドルファート・コムーネの高齢者ケアの仕組みは、デンマーク全体の仕組みと大きな差はない。高齢者本人を中心として、病院・地域精神医療班、家庭医、コムーネの各種サービスが連携してケアシステムを構築している。図4 認知症に関わる多職種連携の流れ(日本の地域包括ケアシステムの5要素をもとに筆者作成)健保連海外医療保障 No.134在宅生活を可能な限り長く続けられるために、24時間訪問介護・看護体制が十分整っている。ミドルファート・コムーネの訪問介護課のリーダーであるLarsenによれば、訪問介護では、日勤(7-15時)はコムーネ内を4地区に分割し、それぞれ約200人の利用者を25〜35人の職員でケアしている。準夜勤(15-23時)はコムーネ全体を1地区として、約35〜40人の職員が担当している。夜勤(23-7時)は、コムーネ全体を、看護師と介護士の2人1組が担当している。自宅での在宅生活が難しいと判断された場合、「エルダーボーリ(高齢者住宅)」と「プライボーリ(ケア付き住宅)」へ入居が可能となる。これらの住宅が集まった「高齢者センター」は、コムーネ運営は6か所、民間運営は1か所である。コムーネ運営のものでは、一般高齢者の定員が計193人、認知症高齢者の定員が計63人である(Konradsen 2014)。高齢者センターは、いくつかのユニットに分かれており、1ユニットは、およそ50㎡のトイレ・シャワー付きの住宅が10戸程度あるのが 一般的である。ここは終の棲家として想定されており、入居者は自宅を売り払ってくるのが普通である。しかし、収入によって家賃補助がコムーネから給付されるため、国民年金だけで十分に入居でき、生活できる。ターミナル・ケアも家庭医、訪問看護との連携により、ここで行われる。入居施設の定員数は決して多くはないようにみえるが、訪問介護・看護体制が十分整っており、自宅での生活で可能な限り長くいられるため、入居待機が問題となることはない。訪問介護・看護の一日あたりの利用回数には制限はない。しかし、通常は1日6回、訪問看護は1日3回が限界であるという。1回の訪問は、サービス内容によって異なるが、5分間様子をみるだけの「思いやり訪問」から45分間の食事作りや掃除までさまざまである。図4では、家庭医とレギオーンの精神科、訪問診療や看護を行う地域精神医療班、認知症コーディネーター、ヴィジテーターの関係性が示されている。ここでは、ただ一方に進むだけではなく、お互いがフォローアップしあいながら、補完し合っていることが重要である。さらに、ミドルファート・コムーネは、シュッドデンマーク・レギオーン管内にあり、レギオーフォローアップフォローアップ報告出所:Konradsen(2014)の資料をもとに筆者作成レギオーン住居高齢者本人コムーネ介護予防高齢者委員会医療介護生活支援高齢者ボランティア団体家庭医(初期診療)ヴィジテーターレギオーンの精神科・地域精神医療班(診察・診断・治療)認知症コーディネーター照会フォローアップコミュニケーションレポートフォローアップ
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