①⑤②③④62図2 デンマークの高齢者ケアの変遷と構図続するために、②の在宅ケアサービス(給食サービス、ホームヘルプ、訪問看護、緊急通報システムなど)を充実させていった。在宅ケアを支えるためには、さまざまな自助具や介護機器が必要であり、それらを支給する④の補助器具センターがすべてのコムーネに設置されている。補助器具センターでは、多様な歩行器、高齢者の機能に合わせた食事自助具(ナイフやフォーク、包丁など)、電動車いす、介助しやすいように昇降や回転するベッド、ベッドからの落下や夜間の認知症からの歩き回りなどを感知するマットなど、さまざまな補助器具を提供している。補助器具は基本的に無償貸与であり、使用終了後は、まだ使えるものは回収され、洗浄や修理などもされ、リサイクル、リユースされる。中田(2015)は、デンマークの高齢者ケアを、①ヘルスケア・アクティヴィティ(アクティヴィティセンターなど)、②居住(高齢者住宅など)、③ケア(訪問介護・ 看護など)、④医療、⑤経済(年金、家賃補助など)、といった分野ごとにサービスが連携・展開されていると指摘する。これらのサービスは、医療はレギオーンが担当し、そのほかはコムーネが担当している。しかし、両者の連携はしっかり取れている。そして、後述もするが、高齢者自身の活動が出所:『デンマークの選択・日本の視座』(2013)の野口定久作成図を基に作成大きくケア施策に関わっている。コムーネには高齢者委員会の設置が義務化され、高齢者の住民から公選で選出された委員によって、コムーネの高齢者施策に影響を及ぼしている。また、高齢者自身のボランティア活動として介護予防に関する活動や、見守り活動や看取りへの関わりなどを行っている。コムーネではデイサービスやプライセンターでの売店、高齢者向けのPC教室などの運営は元気な高齢者のボランティアが担っている。そのために、ボランティアの登録や組織化を担当する専従職員がコムーネに1人置かれている。これらはフォーマルなサービスを補完するものであり、日本よりもはるかに充実しているフォーマルサービスにもかかわらず、それらを補完するためには不可欠なものなのである。図3は、レギオーンは医療について責任を持つが、医療での連携も含め、コムーネがサービス提供の中心的役割を果たしていることを示している。さらに、高齢者ボランティア団体が介護予防や生活支援において役割の一部を担い、高齢者委員会がコムーネに影響力を及ぼす様子を示している。プライエムデイサービスセンタープライセンター施設ケアプライボーリ多機能型1988年施行の1988年施行の「高齢者・障害者住宅法」「高齢者・障害者住宅法」バリアフリー住宅高齢者住宅早めの住み替えシェアハウス家賃公的補助制度住宅在宅ケア補助器具センター給食サービスホームヘルパー(コレクティブ方式)訪問ナース、訪問リハビリテーション緊急通報システム
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