60図1 デンマークの高齢者住宅の一本化1988年施行の高齢者・障害者住宅法プライエム保護住宅年金者住宅高齢者向け集合住宅出所:松岡(2009)の表をもとに、筆者が抜粋作成とによって可能な限りの自立生活をめざそうというもの」としている。そのために、補助器具(ウェルフェアテクノロジーも含む)の貸与や住宅の改造も公費で行われる。こうした考えは、現在にも引き継がれており、在宅の中心である住居の確保と、在宅を支える24時間在宅ケアは当たり前となっている。さまざまな議論がなされ、高齢者福祉の3原則が提言された。そして社会支援法の改正によって、1988年以降はプライエムと保護住宅の新設が禁止された。さらに、1988年施行の「高齢者・障害者住宅法(一般的に高齢者住宅法)」によって、すべての高齢者の住宅を、「高齢者住宅」にまとめた。この背景には、「住まいとケアの分離」という考えがあった。「施設では居住機能とケア機能がパッケージ化されており、それだからこそ在宅での生活が困難になった時に施設に移らざるを得なくなるのである。居住機能とケア機能を切り離して一人ひとりのニーズに合わせてケアを提供できるようにすれば、最後に施設に引っ越しをする必要はない」というわけである(松岡 2009)。こうして、施設であるプライエムではなく、個人の住宅といえるエルダーボーリ(高齢者住宅)、プライボーリ(ケア付き住宅)へと舵が切られたのである。もちろん、そうした住宅で住まうには、在宅サービスの充実は不可欠であり、24時間在宅ケアも同時に整備されていくことになる。これまでに述べてきた通り、在宅ケアを可能とするには、まず住宅の充実が不可欠であり、そのために高齢者住宅が生まれた。高齢者住宅法に基づく高齢者住宅のスタンダードとされたのは以下である。•1戸当たり平均面積67㎡以下(共用部分含む)•各戸に風呂・トイレ・台所・上下水道を設置• 車いす使用者を含む高齢者や障害者に対応した構造一方で、最期まで生き生きと健康に暮らすことを目的に、早めの引っ越しが推奨され、もともと住んでいた住宅が状態に応じて不適切な住宅となり、そこに住み続けることによって起きる虚弱化を防止していった。引っ越し先は高齢者住宅が推奨された。一般的な高齢者住宅は、上記のスタンダードをもとに、高齢者にやさしいバリアフリーの住宅で、バス、トイレ、シャワーを備えた2DKが一般的であった。こうした高齢者住宅には、エルダーボーリ(高齢者住宅)とプライボーリ(ケア付き住宅)があり、それらが集合し、共有のフロアやデイサービスなどが配置された形は、エルダーセンターやプライセンターと呼ばれ、筆者はこれらを高齢者センターと訳している。たとえば、あるプライセンターでは、5棟の建物があり、1棟は管理棟のような事務室やデイサービスが置かれ、残り4棟のそれぞれに10戸のプライボーリが配置され、共有のリビングルームが併設されてい高齢者住宅(高齢者住宅、プライボーリなど)2. 在宅ケアの内容について(1)在宅を支える住まい
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