046②選択的サービス(additional services)③拡張サービス(enhanced services)となっている。①は文字通り、患者への治療の提供全般、慢性疾患の場合の管理、終末期のケアなど、GPとして提供しなければならない必須のサービスであり、②は、避妊サービスや、時間外サービス、簡単な手術(minor surgery)など、各診療所において提供の有無を判断できるサービスである。①②のサービスの報酬は、包括報酬(global sum)として、住民の年齢・性別などを考慮しつつ、登録人数を基本として算定され、地理的条件なども加味される。そして②については、提供しない場合、その分が減額される。③は、さらに、NHSイングランドの委託によるDES(directed enhanced services)と各ICBが地域の実情に応じて委託するLES(local enhanced services)とがあり、いずれも各診療所において提供するかどうかを判断することができ、提供する場合には、報酬が上乗せされるものである。ここでは、在宅ケアに関するプライマリ・メディカル・ケアとしてGPによる往診に言及しておきたい。GPは、上記①として、診療範囲内の登録患者については、患者からの求めに応じて往診を行っていた。ただ、往診は、GMS契約として契約内容に盛り込まれているため実施しなければならないものの、具体的な方法(誰が、どのような場合に訪問すべきか、など)については規定されておらず、それぞれの診療所の判断にゆだねられている状況であった。そして医師不足やGP業務の負担増により、現在までに、患者からの一方的な求めによる「往診」は基本的に行わず、患者の状態や状況について、医学的見地から必要のある場合に限り、診療時間内に「訪問診療」のみ行うようになっており18)、多くのGP診療所が訪問診療の指針を示している。そしてコロナ禍を経た現在までに、この様相はさらに変化している。一言でいえば、ICTの活用の推進である。現在、契約のレベルで、診療所は患者に対して、いわゆるデジタルサービスを提供するよう求められるようになっている。具体的には、• クラウド・テレフォニーというインターネット経由の通話システムによる相談•オンライン診療•患者からのカルテ情報へのアクセス•オンライン処方箋発行(リピート処方箋含む)•診療所のオンライン予約•インターネット上での診療所情報の提供などである。市民(患者)は、スマートフォンのアプリを通じてGP診療所が提供するこれらのサービスを利用することができるようになっている。NHSではもともと、NHS全体としてe-healthというインターネットを通じた情報提供と医療機関への受診の助言(疾病への対応)などを行うサイトを展開してきており、在宅支援の一助ともなっていた。コロナ禍以前から進められていたこのような動きは、コロナ期に一気に加速され、それが一定程度定着するようになっている。またデジタル技術の活用は、患者に対するサービスのみならず、職者間の情報共有のレベルでも進められている。このように、イギリスでのプライマリ・ケア・レベルでの在宅ケアの支援は、先に見たNHSの提供体制の統合に加え、実際のサービス提供におけるデジタル技術の活用により、サービス提供の担い手(業務の配分)にも大きな変化をもたらすようになっている19)。3. セカンダリ・ケアにおける在宅ケアの取り組み在宅ケアの推進は、セカンダリ・ケア(=病院医療)においても取り組みが行われている。このとき、注意を要するのは、イギリスにおけるセカンダリ・ケアの在宅推進は病院からの早0期退院00を意味しているわけではないという点である。既に述べたように、イギリスにおける病院とGP診療所の違いは、日本のように、(主として)規模に基づく提供場所の違い以上に、医師の違いを意味しており、したがって、提供される医療に違いがある。つまり、セカンダリ・
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