健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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(Integrated Care Board:ICB)(Local Authority:LA)② 統合ケア・パートナーシップ出所:執筆者作成①統合ケア・システム③ プライマリ・ケア・ネットワーク(Primary Care Network:PCN)図5へ43図4 現在(2022~)のNHSの枠組み(試)出所:執筆者作成健保連海外医療保障 No.134ること自体がイコール悪ということではなく、節約する目的を問いながら、また客観的資料(エビデンス)を用いながら、文字通り、試行錯誤を繰り返しつつ前に進もうとしている点を看取できる。さて、このような医療保障の特徴を踏まえ、ここでは、現在のNHSの提供体制の概略についてみておくことにしたい。現在、2022年保健・医療及びケア法(Health and Care Act 2022(c.31))に基づく法改正により、図4のような提供体制になっている。ポイントは「統合」(integrate)であり、以下、次の4つの「統合」に着目して指摘していきたい。① 提供責任者とサービス提供者との「統合」 … 統合ケア・システム② 地方自治体=福祉サービスとNHS=医療との「統合」 … 統合ケア・パートナーシップ③ サービス提供者における職者間の「統合」 … プライマリ・ケア・ネットワーク④ 全市民を対象とした個人ケア(ケアの「統合」) … ユニバーサル・パーソナル・ケア現在、イングランドには42の①統合ケア・ システム(Integrated Care System. 以下、ICS)が存在する。これは、地域住民全体の健康状態(population health)やウェル・ビーイング(well-being)の成果の向上、健康状態の不平等の是正などを目的とし、提供責任者と、プライマリ・ケア/セカンダリ・ケアなどのサービス提供者、さらには地方自治体やコミュニティ、地域での諸活動などが一体となってサービス提供に取り組む体制を意味している。従来までの緩やかな連携ではなく、法的な根拠をもって進められている点がポイントとなる。そしてこのICSの中心にあるのが、法律に基づき設置される統合ケア委員会(Integrated Care Board. 以下、ICB)である(2006年NHS法11条)。従来のクリニカル・コミッショニング・ボード(Clinical Commissioning Board:CCG)に代わり、現在ICBがコミッショニングを行う提供責任者となっており、NHSの予算を管理し、具体的な サービス展開の実施責任を負う。ICSにおいてもう一つ重要な役割を果たすのが、同じく法定図4現在(2022~)のNHSの枠組み(試)NHST(Provider)NHSFTPCN地方自治体(NHS Commissioner)(Integrated Care Partnership:ICP)( Integrated Care System:ICS)(1)提供責任者保健・医療及び社会ケア大臣保健・医療及び社会ケア省統合ケア委員会コミッショニングNHSイングランド(NHS England:NHSE)設立・権限の委任ケア・クオリティ・コミッション(Care Quality Commission:CQC)(2)サービス提供者規制・監督・立入検査コミッショニング(3)規制・監督者“システム(system)”レベル“プレイス(place)”レベル“地域(Neighbourhood)”レベル(Regulator)3. NHSの現在—4つの「統合」

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