42図2 コミッショニング・サイクル図3 医療サービスと福祉サービスの関係機関である。提供責任者やサービス提供者からは独立した位置づけを与えられており、住民に提供されるサービスの質確保やサービスの提供指針を提示する役割を果たしている。NHSはこのような3つの主体の関係性の中で理解していくものとなっている。上述した、プライマリ・ケアの重視、コミッショニングという手法の展開(による意思決定機関の変化)の、ある意味で帰結ともいうべき、地方・地域の重視、という点もNHSの現在の特徴として押さえておくべき点である。NHSはもともとは病院管理のしくみであり、これを国(中央政府)が行っていたところに、大きな特徴があった(図3)。しかし今日に至るまでに、NHSの主要な機能は地方に分権化されてきており10)、さらにこのことが、従来より地方自治出所:NHS EnglandのHPより執筆者作成・医療サービス - 国家 - 原則、患者の費用負担なし・福祉サービス - 地方 - 利用者の費用負担あり体の責任として位置づけられてきていた福祉サービスとの関係にも変化をもたらすこととなっている。医療保障の特徴の最後に、徹底した現実主義と効率化、という点を挙げておきたい。これは医療保障改革—その中心はNHS改革であるが—に向けられる基本的な考え方、ということである。税財源ということと相まって、これまでのNHS改革は、一言でいえば、限られた資源(財源・人員)をいかに公正に配分し、いかに効率的・効果的に用いるか、という点に向けられてきている。コロナ期もそうであったが、ギリギリのところでは、誰かに医療を提供することが誰かの医療を提供しない(あきらめる)ことになる、という厳しい現実的判断を伴うことを彼らはよく理解している。ゆえに、節約す図2コミッショニング・サイクル出所:NHS EnglandのHPより執筆者作成サービス提供の評価と見直し・再設計住民の健康状態の捕捉とニーズ評価サービスの実効性(質・量)管理優先順位の設定ニーズ捕捉とサービス計画過程サービスのモニタリング・評価過程サービスの設計提供枠組みの確定サービスの調達過程(契約)患者の選択・医師の臨床判断の支援需要の管理契約
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