健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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注1) Ministry of Public Health, Welfare and Sport 32とケア契約を結んでいる場合や、ケア提供者が起業家である場合は、この限りではなくなり、最低賃金を支払う義務はなく、時給を低く設定することもできる。92)社会支援法と青少年法のケア料金は、基礎自治体が設定し、毎月の払い戻しまたは特定費用を後払いで申告する。さらに毎月提供したケア、旅費やその他の経費、契約で規定される請求、ソーシャルネットワークからの助けに対する払い戻しなど、基礎自治体に申告書を提出し、明細によってのみ、社会保険銀行(SVB)は月単位で手当を支払う。オランダの医療・介護制度の基盤は、健康保険法(Zvw)、長期療養サービス保険法(Wlz)、2015年社会支援法(WMO2015)、青少年法(Jeugdwet)の4つの基本的な医療・介護関連法に定められ運営される。2006年医療改革による一元的な強制保険制度、2015年の長期療養・介護サービス改革以降、費用の節減、在宅生活の継続支援、ケアの調整が計画の目標とされる。ゲートキーパーとしてケアアセスメントセンター(CIZ)による受給資格の判定、ケアプロファイルによるサービス提供管理、家事援助等の一部の社会支援法(WMO2015)への移行、個人介護予算(Pgb)によるインフォーマルケアとフォーマルサービスの組み合わせなど、システム全体の効率化がはかられる。オランダの医療・介護制度は、医療と介護、そして社会的支援が連続するところに特徴があり、個人の自由な選択と連帯への個人貢献が強調される。国と基礎自治体、政府と民間企業、医療介護提供専門職と市民の各レベルにおける分権化が、断片化と自己責任化ではなく、包摂的な社会基盤を強化していくため、統合化と協働が課題となる。また在宅ケアにおける個人の選択を支えるセルフ・マネジメントの向上と意思決定支援が重視される。ケアを受ける人もケアを提供する人も、それぞれの個人の自由な選択を可能とするための社会的環境整備が医療・介護制度と連動しながら進められる状況をみることができる。付記 本研究は、 JSPS科研費「18K02109」の助成を受けたものです。(2016)Healthcare in the Netherlands. [healthcare+in+the+netherlands.pdf](アクセス日2024年5月25日) および、公正取引委員会・世界の競争法・オランダ、ウェブサイト参照。 [https://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/alphabetic/n/netherlands.html](アクセス日2024年8月10日)2) Ministerie van Financiën, 6.5 Financiering van de zorguitgaven(財務省、6.5 医療費の 財源について), Tabel 14 Financiering bruto zorguitgaven(表14 総医療支出の資金調達) [https://www.rijksfinancien.nl/memorie-van-toelichting/2024/OWB/XVI/onderdeel/2111916](アクセス日2024年7月14日)3) Maarse and Jeurissen(2020)によれば、19世紀、多くの労働者には医療費を支払う余裕がなく、病気になった場合は慈善団体や地方自治体に頼るしか収入保障がなかった。社会的保護を改善するため、労働組合、ギルド、雇用主、地方自治体により、家庭医学、一部の専門医療、産科医療、医薬品などの限られた医療サービスのみを対象とする自主的な疾病基金(Ziekenfondsen)が設立された。20世紀初頭までに、人口の約10%が疾病基金に加入し、この割合は、第二次世界大戦前夜には約38%まで上昇した。医師会(1840年設立)からの強い圧力により、疾病基金は低所得者のみを受け入れた。疾病基金の補償を受ける資格がない人は、自主的に民間の補償を購入することができ、これらの任意制度は、民間医療保険の先駆けとなった。ただし、厳密に言えば、医療保険の初期には疾病基金も民間保険会社(Private insurers)として運営された。疾病基金は主に社会的機能を果たしつつ現物給付を提供し、民間の補償は費用償還モデルを用いた。疾病基金令(Sickness Funds Decree, Ⅶ. まとめにかえて

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