健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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23健保連海外医療保障 No.134力し、必要に応じ医師と協力して的確なケアを判断する。地区看護師の多くは在宅ケア組織(Thuiszorgorganisatie)に雇用される。ケア提供者を選ぶときは、住居のある自治体の近隣 地区チーム、一般開業医、退院支援看護師か ら助言を求める。地区看護に在宅看護・介護 が含まれ、着替えや入浴、排泄の介助、傷の手当て、服薬支援が挙げられる。また地区看護師は、介護、福祉、住宅について自治体と協定(Agreement, Safspraken)を結ぶ。地区看護師は、受療者の家族や友人、かかりつけ医、専門医、ソーシャルワーカーと一緒にケアを手配し、本人が自分でできることと必要な看護・介護について話し合う。地区看護は、現物給付(Zorg in natura, Zin)と個人介護予算の提供方法がある。現物給付の場合、在宅ケア組織は健康保険会社と契約を結び、全てを手配し、在宅ケア組織への費用は健康保険会社から支払われる。ただし、健康保険会社と契約を結んでいない在宅ケア組織を選択した場合、全額が払い戻されるわけではない。また、個人介護予算では、医療者を選択し契約する。健康保険会社は医療者に支払う予算を用意する41)。2015年予算ベースでは、在宅看護・介護は30億ユーロ、健康保険法(Zvw)全体では444億ユーロであった42)。2022年の医療従事者への支出でみると、健康保険法(Zvw)の総医療費499億9,700万ユーロのうち、在宅ケア・長期ケアは30億5,000万ユーロである。長期療養サービス保険法(Wlz)の総医療費223億3,400万ユーロのうち、在宅ケア・長期ケアは23億9,300万ユーロである。健康保険法(Zvw)と長期療養サービス保険法(Wlz)を合わせると723億3,100万ユーロであり、そのうち在宅ケア・長期ケアは合わせて54億4,300万ユーロである。入院患者の長期ケアは、長期療養サービス保険法(Wlz)では191億9,400万 ユーロである。免責控除額や自己負担額を含む世帯の自己負担額は97億400万ユーロである(CBS, Statline)43)。健康保険法(Zvw)は非常に明確に定義された制度であるため、他の領域から健康保険法(Zvw)への移行は困難であるが、他への移行は可能である。医療も「社会的」なものになり、非医療の領域における解決策が示される。健康保険法(Zvw)には、免責控除額が課せられるが、かかりつけ医(GP)と地区看護には免責控除額はない。高所得者は自己負担額が高いため、長期療養サービス保険法(Wlz)よりも健康保険法(Zvw)や2015年社会支援法(WMO2015)によるケアや支援を求める傾向がある(保健福祉スポーツ省 2024:20)44)。長い間、障害者の専門的ケアは、1968年にさかのぼる特別医療費保険(AWBZ)に基づいて支出されてきた。1995年、個人介護予算(Pgb)が補助金制度として特別医療費保険(AWBZ)に組み込まれた。1968年以降、施設の範囲は広がり、医療児童養護施設(1970)、老人ホームデイケア(1973)、クロスワーク(公衆衛生分野の民間団体)(1980)、地域の精神保健施設(1982)、家族ケアと精神保健(1989)、福祉法(1994)、長期在宅ケア(1996)、高齢者ケア(1997)、特別養護老人ホーム(2001)と拡大した。特別医療費保険(AWBZ)では、政府が長期ケアの責任を負ったが、医療へのアクセスは断片的で、均等ではなかった。1990年代半ばにゲートキーパーの厳格化と標準化が始まり、2005年に長期ケアの独立した機関としてケア アセスメントセンターが設立された。2007年に、障害者施設法、福祉法、特別医療費保険(AWBZ)の家事と介護部門を統合して社会支援法が施行された。2015年における長期療養・介護サービス改革(HLZ)の一環として、基礎自治体(Municipality, Gemeente)の業務が拡大され、社会支援法の後継として、2015年社会支援法(WMO2015)が施行された。この改革では、施設入所者を減らし、できる限り在宅生活を続ける高齢者の希望を実現する目的も含まれた。改革以前から、特別医療費保険(AWBZ)の定額ケアパッケージを施設外でも適用し、介3. 2015年社会支援法(WMO2015)

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