19健保連海外医療保障 No.134がある。18歳以上の人は、保険料、拠出金、税金を通じて医療費に貢献する。基本パッケージに含まれる医療の約50%は、国立医療研究所が管理する健康保険基金によって支払われる。受入義務のため、一部の健康保険会社は医療の必要性が高い被保険者を抱え、他の健康保険会社よりも高い費用を負担する。このため、国立医療研究所はリスク均等化を実施する。このリスク調整済拠出金は健康保険基金から支払われる22)。健康保険基金は、所得比例保険料と18歳未満の被保険者に対する政府負担金によって賄われる。18歳未満の被保険者に対し、健康保険会社は定額保険料の請求はできない。所得比例保険料は、税務当局を通じて健康保険基金に納付される。給与所得者と年金等の給付金受給者(uitkeringsgerechtigden)の場合、雇用主または給付機関がそれぞれ保険料を拠出する。自営業者はZvw査定による保険料(2024年5.32%, 2023年5.43%)を拠出する。納税による政府の拠出金も健康保険基金に移管される。この基金は、とりわけリスク均等化の実施に責任を持つ国立医療研究所によって管理される。健康保険会社への拠出金は、健康保険基金から支払わ れる23)。加入者の所得依存型保険料とリスク構造調整プレミアムの組み合わせは「社会連帯」(再配分)を堅持し、定額保険料は価格メカニズムとして機能する(佐藤 2007)。オランダの医療・介護制度は、医療保険と介護保険が分離独立して法的に整備されているというより、医療と介護が連続している(宮本 2018)。その介護制度を次にみていく。継承するものである(大森 2015:20)。特別医療費保険(AWBZ)でカバーされるサービスは、1年を超える病院のサービス、1年を超えるリハビリテーション、訪問看護、出産前のサービス、代謝にかかわる遺伝性疾患の検査、国の予防接種プログラムの下での予防接種、高齢者介護サービス、精神介護サービスなどであった (大森 2015:20-21)。特別医療費保険(AWBZ)は、制度施行時から「途方もない費用のかかるリスク(Catastrophic risk)」を補償する制度として位置づけられた(大森 2011)。医療費は、中央政府の総支出の中で最大の 伸びを示す項目であった。特別医療費保険(AWBZ)への支出は、2004年の207億ユーロから2014年の約281億ユーロに増加した。当時のルッテ/アッシャー政権は医療費の抑制に努め、2015年から介護制度改革を導入した。この制度変更は、2018年以降に最大35億ユーロの構造的削減を伴うもので、2013年の支出水準にとどめる計画である。2013年の特別医療費保険(AWBZ)の実績は275億ユーロである(Algemene Rekenkamer 会計検査院 2015)24)。特別医療費保険(AWBZ)は、高齢者ケアのみならず、原則としてすべての慢性期ケア、特に民間市場での保険が不可能な高額費用を補償した。2016年の長期療養の公的支出に占める施設介護の割合は非常に高く92.7%で、同年のEU平均の56%を大幅に上回った。他方、在宅ケア費は長期療養予算全体の7.3%しか費やされておらず、財政を圧迫する施設ケア供給を改め、自立生活支援を目的とする在宅ケアを推進する介護制度改革の余地が示された(European Commission 2019:430)25)。2015年以降、全ての長期ケアは長期療養サービス保険(Wlz)に基づいて提供され、最も脆弱なカテゴリーに分類される人々(重度の認知症、精神障害、身体障害、知的障害をもつ人々)に対象が絞られた。それまで特別医療費保険の適用を受けていた軽いケアや支援は、身近な地方自治体で実施する社会支援法や青少年法に移行した26)。Ⅲ. 2015年長期療養・介護サービス改革(Hervorming Langdurige Zorg, HLZ)オランダでは、2015年1月1日から長期療養サービス保険(Wlz)が導入された。この法制度は、オランダが世界で初めて1968年に導入した介護保険である特別医療費保険(AWBZ)を
元のページ ../index.html#22