在宅ケアと地域連携健保連海外医療保障 No.13410地域支援連携(CTA)が一例である。これらの複雑さを解消するために、疾病や年齢に関係なく、あらゆる専門職に対応できるように、医療ネットワークやMAIA、地域支援プラットフォーム(PTA)、地域支援連携(CTA)を単一の連携支援システムに統合することが進められている44)。連携支援システムは、医療制度の組織化と変革に関する2019年7月14日の法律45)によって創設されている。連携支援システムは、複雑な状況、特に様々な困難を抱えた人々に直面している保健、福祉、医療福祉の専門職の支援を主な目的としており、医師、病院や在宅入院施設の職員、福祉と医療福祉分野の専門職などの利用が想定されている。この連携支援システムは、複数の専門職チームによって構成され、当該地域で利用可能な地域資源に関する情報や助言の提供、適切な専門家の紹介、フォローアップや支援の計画策定、組織編成のサポートなどを専門職に対して行う。具体的な活動領域は、各地域のこれまでの実施状況に合わせて決められる。連携支援システムの運営主体の多くはアソシアシオンによる。主な運営財源は、県のほか、地域保健庁(ARS)によることとなり、地域支援システムと県、地域保健庁との間で目的と資源に関する複数年契約(CPOM)を締結する。以上のように、高齢者分野は、連携支援システム(DAC)と地域情報連携センター(CLIC)が主要な機構となり、高齢者分野の調整・連携の仕組みは、かなり簡素化されるものと期待できる。しかし、もともと調整・連携に関する各仕組みの有無や取組みには、地域間に格差があることから、連携支援システムへの単一化には課題も多い46)。例えば、単一化前の地域連携の取組みごとに強みが異なるため、どの地域連携に依拠して連携支援システムを構築するかによって、人々が抱えている問題への支援のつながりが変わってくる可能性がある。また、現状では連携支援システムの提供のない地域から、連携支援システムが設置されている地域まで様々であり、また、その取組みの成熟度には地域間で大きな格差があることが指摘されている。在宅ケアをめぐる地域連携は、古くて新しい問題である。これまでにも試行錯誤を重ねながら、セクター間や専門職種間といった様々なレベルで多種多様な地域連携の取組みが開発されてきたが、現在もなお進行中の改革である。近年では、高齢者の在宅ケアをめぐる簡素化の動きが見られ、セクター間の連携による簡素化や、多種多様な地域連携のツールの単一化が進められつつある。また、地域連携を基礎付ける考え方にも変化が見られ、高齢者の受療経路(parcours de soins)を越えて、より広い健康経路(parcours de santé)や人生経路(parcours de vie)を見据えた、高齢者に関わる関係者全体の協働で取組む地域をベースにしたサービス提供への統合が目指されつつある。さらに、年齢、病態、障害の有無にかかわらず利用者の特定のニーズに着目し、社会的な脆弱性にも配慮した在宅ケアのあり方を新たな地域連携の取組みを通して模索しているようにもみえる。ここでは、かつての保健医療と福祉のセクター間や専門職種間の歴史的な隔たりを取り去り、より明確で簡素に構造化された在宅ケアの統合的なサービス提供が求められることになろう。今後の展開を注視する必要がある。付記 本稿は、JSPS科研費JP24K04574、JP23K20573、JP20KK0022、MEXT科研費JP21H00663の助成を受けた研究成果の一部である。主な略語APA:Allocation personnalisée dʼautonomieCCAS:Centre communal dʼaction socialeCLIC: Centre Local dʼInformation et de Coordination gérontologiqueCNSA: Caisse nationale de solidarité pour lʼautonomieⅥ. おわりに
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