健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
12/82

9健保連海外医療保障 No.134の情報提供、在宅で働く専門職(特にかかりつけ医)に対する24時間の電話対応、複雑な状況にある人のケアについて各分野での連携を要請した。COVID-19の感染拡大は、各調整組織にとって、医療福祉セクターや専門家への支援、医療経路の中断時の診療などを行う地域連携活動など、新たな取組みを展開するきっかけとなったようである39)。また、地域連携組織においても遠隔医療(télémédecine)の活用が促進され、直面した困難の解決に役立ったとの評価がみられる。これまで見てきたように、在宅ケアの提供構造はかなり複雑で、在宅介護と在宅ケアの提供体制が細分化されており、従来は、在宅生活を維持するにあたり、ケアを必要とする場合は在宅看護サービス(SSIAD)、介護や生活支援などを必要とする場合は在宅援助・支援サービス(SAAD)にそれぞれ申し込み、それぞれの事業者から各サービスを利用していた。こうした状況は、利用者にとっては分かりづらいものであり、問題とされていた。そこで、2022年の社会保障財政法40)により、在宅での援助・支援、ケア提供の大幅な見直しが示された。具体的には、2023年7月13日のデクレ41)により、在宅サービスの強化の一環として、これまでの在宅看護サービス、在宅援助・支援サービス、多目的在宅援助・ケアサービス(SPASAD)が、在宅自律サービス(SAD)に順次統合され、在宅自律サービスという単一のサービス類型になることが今後予定されている42)(2025年上半期までとされている)。これにより、サービスにかかる手続きの簡素化と、利用者にとってより分かりやすく調整・連携されたケアの提供を目指す。これまでの在宅ケアのサービスが、在宅自律サービスに整理されることで、在宅自律サービス事業者は在宅ケアサービスと在宅援助・支援サービスを必要に応じて調整し、また、自らもサービスの提供を行うことになる。在宅自律サービスは、在宅での日常生活行為の支援とケアサービスを提供することを目的とするものである。在宅自律サービスは、日常生活における援助と支援、ケアニーズへの対応、社会参入の援助、自律の喪失の予防、自律の維持・回復、自律への支援を必須の任務とする。これに加え、必要に応じて、支援対象者の介護者への支援活動の提供や高齢者を支援する場合には地域資源センター(CRT)43)の任務を実施することも認められている。これらのサービスの対象者は、自宅で日常生活を送ることに支障があり、ケアまたは社会参入の援助が必要な高齢者、障害者(障害の程度や年齢を問わず)、社会保障法典の規定に列挙されている慢性疾患または特定の長期疾患を持つ60歳未満の人である。在宅自律サービスの専門職が行う日常生活行為の支援は、家事援助、掃除・洗濯、身支度、食事の準備、食事、各種手続きの支援などが含まれる。また、在宅自律サービスでは、終末期のサポートと緩和ケアを提供することができる。在宅自律サービスは、2つの類型を予定している(社会福祉・家族法典 L.313-1-3条)。1つは、在宅援助・支援と在宅ケアの両方を提供する在宅自律サービスである。もう1つは在宅援助・支援のみを提供する在宅自律サービスで、在宅援助・支援を提供し、支援する人々の在宅ケアのニーズへの対応を調整し組織するものである。いずれの類型でも、利用者は、単一の窓口で各サービスを利用することが可能となるため、在宅自律サービスの事業者側には、在宅援助・支援と在宅ケアの各サービスの調整と連携の役割が求められる。2. 連携支援システム(DAC)への単一化先述の通り、同じ地域内で、様々な問題を抱える人々に対する健康経路の支援の調整・連携システムが複数存在している。医療ネットワークやMAIA、地域支援プラットフォーム(PTA)、Ⅴ. 在宅ケアをめぐる近年の改革1. 在宅ケアをめぐる簡素化

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る