健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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在宅ケアと地域連携健保連海外医療保障 No.1348ダのケベック州で広く普及している統合概念に着想を得たものであるとされ32)、その目的は、老年学に携わる様々な人々の資源やスキルを共有し、相互利用することで、制度的な束縛から抜け出し、よりスムーズで利用しやすい高齢者支援を提供できるようにするものである。高齢者向けの適切な健康経路を目指すPAERPAは、医学的または社会的理由で自律が損なわれるおそれのある75歳以上の人々を対象に、2014年から6年間、18の地域で実験的に行われたものである33)。PAERPAは、75歳以上の高齢者が日常生活において自律を可能な限り維持することができるように様々なサービスの連携を改善し、うつ病、多剤投薬、栄養不良、転倒といった高齢者の入院につながる要因を回避する活動を促進することでケアと援助・支援の適切性と質を高めることを目指した取組みである。PAERPAでは、かかりつけ医によって高齢者のケアのための個別ケア計画が策定され、かかりつけ医や看護師、薬剤師、理学療法士などの医療専門職のほか、必要に応じて福祉専門職も参加する連携体制が組織された。また、各専門職により提供されるケアの調整や情報交換を行うために、各地域の専門職、高齢者、介護者向けの情報・支援プラットフォームである地域支援連携(CTA)が構築された。地域支援連携は、個別ケア計画のモニタリングや、専門職のための老年学に関する電話相談、社会的支援や老年学の専門的知識の活性化、治療的患者教育(éducation thérapeutique du patient)の紹介などのサポートを提供する役割を担った。また、退院直後の帰宅困難時の要介護高齢者居住施設での一時的な宿泊提供の紹介、かかりつけ医への情報伝達、医療保険や老齢保険による措置との連携など、適切な退院のための様々な支援も地域支援連携の対象とされていた34)。地域支援連携は、実験終了後、後述の連携支援システム(DAC)への統合の対象とされている。地域支援プラットフォームは、2016年の医療制度の現代化に関する法律35)により導入されたものである36)。地域支援プラットフォームは、医学的、社会的、心理的、経済的問題に関連する複雑な状況(社会的孤立、依存症など)にある患者に直面している専門職(特に一般医であるかかりつけ医)のための支援組織である。地域支援プラットフォームでは、患者の状況に適した地域資源の情報提供や、ホームヘルプサービス、要介護高齢者の入所施設の紹介のほか、各種サービスの専門職への連絡調整を行うこともある。地域支援プラットフォームは主に既存の地域資源やサービス (医療ネットワーク、MAIA、地域情報連携センターなど) に依拠しているが、専門のチームも擁している。地域支援プラットフォームによる連携を通じて、患者の在宅生活の維持の促進を目指している。COVID-19の感染拡大は、在宅ケアにも大きな影響を与えた。国は行動計画と勧告を公表し、訪問型のサービスの提供において、在宅における高齢者の孤立化の解消が最優先課題として、脆弱な高齢者に対して、その予防とケアの継続性の確保を促した38)。また、情報が錯綜する中、既存の地域連携組織を動員して、医療従事者へ(4)PAERPA(5)地域支援プラットフォーム(PTA)(6)地域医療専門職コミュニティ(CPTS)地域医療専門職コミュニティは、地域支援プラットフォームとともに2016年に設立されたものであり、地域内の特定の医療ニーズを満たすために協力する専門家によって運営される柔軟なシステムを構成している37)。医療専門職の主導で設立されたCPTSは、その地域内の医療関係者のほか、地域の病院、医療福祉、福祉専門職などが自発的に集まり、これらの専門家の連携を改善するだけでなく、利用者、患者、居住者の健康経路の構築にも貢献する。3. COVID-19下における地域連携

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