健保連海外医療保障_No.134_2024年9月
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7健保連海外医療保障 No.134複雑化しており、高齢者だけでなくその家族らにとっても、必要な情報を見つけることが困難になる場合がある。地域情報連携センターは、自律の喪失に直面した場合に、自宅で過ごすための解決策を見つけたり、退院後の帰宅支援、施設への入居申請を準備したりするのに役立つ。ワンストップで情報が提供される組織として、地域情報連携センターの存在は重要である。2000年の25か所での実験を経て、2001年のAPAの創設とともに制度化されている29)。地域情報連携センターは、高齢者の支援に関する情報や助言を個別に提供する地域に密着した組織であり、高齢者とその周囲の人のほか、ホームヘルプや在宅支援を行うボランティアなど、高齢者の自律の喪失に関係するすべての人を対象にしている。地域情報連携センターでは、高齢者の支援に関する個別の情報提供や助言のほか、APAの申請、ホームヘルプや遠隔支援サービス、食事の宅配、在宅介護の利用など、高齢者の自律の喪失に関わる手続きを無料で支援する。これに加え、高齢者の状況やニーズの評価に基づき、個々人に合わせた援助計画の立案や、看護師やホームヘルプサービスなどの外部のサービス提供者と協力して、個人援助計画の実施に携わることもある。この他、介護予防の体操教室や家族向けの介護教室など、介護予防と啓発活動の組織化を推進している。地域情報連携センターの運営主体は主にアソシアシオンや、市町村または市町村社会福祉センター(CCAS)である。地域情報連携センターでは、ソーシャルワーカー、看護師、臨床心理士など、地域の医療福祉の専門職と連携しながら活動を行う。運営財源は、県、地域保健庁(ARS)、市町村、全国自律連帯基金などからの補助金や支援金である。(2)医療ネットワーク(réseaux de santé)2002年の患者の権利および医療制度の質に関する法律により構築されてきたネットワークであり、ケアへのアクセス、調整、ケアの継続性を促進するもので、患者の治療に関与する関係者(医療、福祉、医療福祉)を調整するための機能も有している(公衆衛生法典 L.6321-1条)30)。一定の質や組織、運営の基準を満たしている医療ネットワークは、国や地方公共団体、医療保険から補助金を受けることができる。医療ネットワークは、開業医と病院医の間の壁を取り除くのに役立っている。MAIAは、地域でケアや支援を必要とする人々の経路(parcours)の継続性を確保するために、高齢者のケアと支援サービスを組み合わせて提供する取組みである31)。MAIAの最初のプロジェクトは2008年まで■り、2008年から2012年のアルツハイマー計画に基づく。現在では、この手法は全国レベルで導入されており、対象は、アルツハイマー病などの神経変性疾患により自律を失いつつある60歳以上の高齢者である。これにより、自律性を失いつつある60歳以上の高齢者とその介護者に情報へのアクセスを保障し、経路の簡素化を促進するとともに、自律を喪失した高齢者の在宅生活の維持を容易にする。2016年以降、MAIAは全国をカバーしている。MAIAによるサポートは、個人または専門職の要請によって行われる。ケースマネジメントの考え方が導入されており、ケースマネージャー(gestionnaire de cas)は訪問調査を行い、かかりつけ医が提供する意見と調査結果をもとに支援の要否を判断する。支援にあたっては、個別サービス計画を策定し、地域の関係者(病院、要介護高齢者居住施設、デイケア、医療ネットワーク、アソシアシオンなど)との間で情報を共有し、各関係者の行動を方向付ける。ケースマネージャーは、本人とその家族、かかりつけ医、その他在宅ケアや支援を行うすべての専門職の直接の対話者となり、これらすべての関係者間の橋渡し役としての役割を担う。MAIAは受け入れ組織ではなく、ツールの共同構築と自律を喪失した高齢者に関わる関係者間の協働で取り組むことによる統合(intégration)の概念に基づいた取組みである。これは、カナ(3)MAIA

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