健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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5健保連海外医療保障 No.133や瞑想、ストレッチやヨガなど、妊婦やそのパートナーを対象にした講座で、定員制のものも多いため事前申込みが必要な場合がある。これら出産準備コースの費用についても疾病保険が負担する23)。ドイツでは、妊婦検診などの産前ケアは産婦人科クリニックで行い、分■は病院で行う分業制となっているため、どの病院で産むかを、自身のバースプランやリスク、自宅からの距離などを考慮の上決定する必要がある24)。分■室をはじめとする施設見学会を行っている病院も多いので、複数の見学会に参加して病院を選択することができる。出産予約の申込みは、出産予定日の1か月前からという病院が多い。高リスク妊婦や帝王切開などのバースプランを計画している場合には、出産する病院で事前に面談の上でプランニング等が行われる場合がある。どこで出産するかに関わらず、妊婦の好きな姿勢で産む自然出産が一般的とされるが、水中分■など一定の設備が必要なスタイルを希望する場合は、施設見学会などを利用してあらかじめ対応可能かどうかを確認して予約をする必要がある。また、硬膜外麻酔を用いた無痛分■(PDA)についても法定疾病保険でカバーされる。近年は、PDAを最初から希望する妊婦の数が増加しているが25)、陣痛が始まって分■室で出産している最中でも、希望すれば対応できる26)。但し、無痛分■の場合には、PDA使用に関する同意書等の書類へのサインが必要となるため、希望者はあらかじめ書類を入手・記入しておくとスムーズに進むことが多い。それでも、分■の経過(思いの外早くお産が進んだ場合など)や病院側の都合(麻酔医が他の手術や分■を担当していて手が空かないなど)により、あらかじめ希望していても無痛分■で出産することができないケースも少なくない27)。ドイツでは、出産にパートナーが立ち会うのは当たり前と認識されており、分■室に入り、助産師の指示の下、妊婦への励ましや声掛け、いきみのタイミングサポートなどを行い、出産後はへその緒を切り、最初のおむつ替えまで行うのが通常であるようだ。なお、助産師法(Hebammengesetz)により、普通分■は助産師が単独で行うことができ、医師は、緊急時を除き、出産時に助産師を必ず関与させなければならず、医師が出産プロセスに介入するのは、原則として医学的に必要な場合のみである。助産師は、赤ちゃんの位置と心拍数を確認し、母親への精神的なサポートを提供するとともに、陣痛の処理や痛みの管理など、分■に関するトータルケアを提供する。赤ちゃんはできるだけ長く人肌に触れていた方が良いという考え方から、いわゆるカンガルーケアが重視されている。そのため、出産直後から母親の胸の上に置いたまますぐに母子同室となり赤ちゃんの世話が始まる。日本では、出産した病院に1週間ほど入院し、その間に助産師からおむつ替えや入浴の仕方、授乳のポイントなどをはじめから丁寧に教えてもらえるが、ドイツでは、入院期間が自然分■で2〜3日、帝王切開で4日程度と日本に比べて短く、入院中にこまめなサポートはあまりないのが通常で、知りたいことや困ったことがあれば、産婦側から質問をするなど積極的なアクションを起こす必要がある。赤ちゃんは2回目の新生児検診を受け、母子ともに問題なければ退院となる。退院時には、子育てのしおりや子ども手帳(Kinder-Untersuchungsheft)などを受け取る。産後ケアで最も頼りになるのは、退院後に週1・2回程度の頻度で自宅を訪問してくれる助産師によるケアである。赤ちゃんの健康状態や母体の状態のチェックや赤ちゃんのお世話の仕方やミルク量の調整などを教えてくれるなど、退院後約1か月にわたり、困りごとや相談に乗ってくれる頼もしい存在である。2015年に施行された予防法(PrävG)により、被保険者が産褥期に助産師によるケアを受けられる期間が4週(2)出産時のケア(3)産後ケア

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