諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障いる。産後ケアに関しては、産婦・新生児健康管理支援事業が公的な支援施策として展開され、公的・民間による産後調理院が整備されてきている。産後調理院については、利用料に大きな違いがあり、公的産後調理院が比較的安く利用できるが、その数は大変少ない状況であることは、すでに確認したとおりである。結婚年齢の高まりとともに不妊および不妊治療患者数の増加がみられる。2017年の不妊(難妊を含む)患者数は、約20万9,000人であったものが、2021年には約25万2,000人と約、1.2倍の増加となっている。不妊治療の利用者は、2017年に約1万3,000人であったのが、2021年には約14万4,000人と約11.5倍に急増した。2022年には不妊と診断された人数および不妊治療利用者は若干減少しているものの、不妊や不妊治療に対する認識およびニーズの高まりをうかがい知ることができる。また、不妊治療による出生児の比率の増加がみられる。2018年の不妊治療により生まれた出生児は、11,949人であり、これは同年の出生児全体の4.2%を占め、さらに2019年には23,727人に増加し出生児全体の7.9%であったとされる。くわえて、不妊治療により生まれる新生児には、双子など多胎児であることが多い。このことが、2023年の多胎児の場合の妊娠・出産診療費支援の支給額引き上げにつながっている。区分不妊男性不妊治療不妊不妊治療女性出所:キム・ウンジョン(2023)、健康保険審査評価院統計資料15)をもとに作成。2017201862,46877,9715,20353,933146,235151,4897,36662,5292019202080,75379,02956,77560,241150,049149,35366,54770,505韓国では、2000年以降の少子化を背景に、妊娠・出産に関する医療や不妊治療が公的医療保険である国民健康保険の適用対象となるとともに、自己負担分についての経済的負担軽減のための支援として妊娠・出産診療費支援事業については国民健康保険を、その他の周産期に関する支援や不妊夫婦治療費支援事業は公費を財源として展開されてきている。これらは、低出産・高齢社会基本計画の方針に沿う形で、国民健康保険法や母子保健法などの改正が行われながら進められてきた。それほどに韓国では2000年以降の少子高齢化が重大な社会問題となってきたということであり、また、利用状況からは周産期医療や生殖補助医療に対する人々の関心の高まりをうかがい知ることができる。しかしながら、よく知られているように、第3次までの少子化対策をもってしても、韓国の出生率は上昇せず、またそれを維持するどころか下降傾向にある(2005年:1.08、2018年:0.98、2022年:0.78)。そうした状況をふまえると、合計特殊出生率の達成目標を提示して生み育てることを強く推奨する形での少子化対策の一環として、周産期医療や生殖補助医療の公的な保障を拡大することが、少子化克服という意味で効果があるのか、という点では疑問が残るだろう。また、生殖補助医療に関しては倫理的な問題が提起されている。たとえば、体外受精の際に、過排卵誘導となったために結果として採取され(2)生殖補助医療表10 性別にみる不妊患者および不妊治療利用患者数 (単位:人)2021202289,35086,58265,90064,975162,938156,76578,09977,597健保連海外医療保障 No.13368Ⅳ. まとめ―少子化対策の一環として拡大する韓国のリプロダクティブヘルス
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