67健保連海外医療保障 No.1332022年12月23日現在で、人工授精を行うことができる指定医療機関は、272か所、体外受精を行うことができる指定医療機関は、152か所となっている(保健福祉部2023c:165-189)。適用対象となるのは、国内法上、婚姻状態の不妊夫婦または事実上婚姻関係の不妊夫婦であり、診療を始めた日を基準に女性の年齢が満45歳未満の場合である。女性の年齢が45歳以上の場合にも認定することもできるが、その場合には治療行為料の自己負担が50%となる。また、不妊診断時に保健福祉部告示で定める適応症に該当する者も対象としている。不妊夫婦治療費支援事業とは、体外受精および人工授精など、生殖補助医療を受ける不妊夫婦に健康保険の自己負担および非給付の一部を補填的に支援し、経済的負担を軽減することによって、不妊夫婦が子どもを持つことができるよう支援することを目的とした事業である。根拠法は、低出産・高齢社会基本法および母子保健法である。2000年代に入って以降、不妊夫婦の持続的な増加にともない、不妊問題を個別家庭の問題ではなく社会の問題としてとらえ対処する必要性があると考えられるようになった。たとえば、2005年には、不妊で悩む当事者が国家支援の署名運動を展開し(8万5,000人)、また国家支援を求める請願書が国会に提出されるなど、国家的責務として不妊治療に対する支援が行われることが望まれた。特に当時、体外受精などの不妊治療費は国民健康保険が適用されておらず高額であり、治療費のうち一部を支援することによって不妊夫婦の経済的負担の軽減が強く求められた。このような動きを受けて、不妊夫婦治療費支援事業は政府事業として2006年からスタートし、その後2017年に不妊治療が国民健康保険の適用となった以降は、自己負担および非給付の一部を同事業によって支援してきた。2022年1月からは、同事業は地方移譲されている。妊娠・出産が公的医療保険である国民健康保険の適用対象となっており、加えてそれらにかかる自己負担金の支払いに使える利用券として国民健康保険を財源とした妊娠・出産診療費支援制度がある。これらの組み合わせによって、妊娠・出産にかかわる医療費についてはほぼ自己負担がないという仕組みとなっているといえる。妊娠・出産診療費支援制度の申請者は、2018年は35万4,587件であったのが、2019年に36万5,579件、2020年は32万9,688件であり、コロナ禍の2021年には18万8,238件に急減した。その後の2022年には、42万864件へと増加を見せた。この間の申請者のうち、もっとも多い割合であった年齢層(5歳単位)は、30歳以上35歳未満で79万8,110件であり、43.1%を占めている。次に多かったのは35歳〜40歳未満で49万682人であり、26.9%を占めていた。また、2022年に実際使用された妊娠・出産診療費は、3,497億6,578万ウォンであり、医療機関種別で見てみると、病院での利用は1,397億397万ウォンで39.9%、医院は1,138億7,890万ウォンで32.6%であった。また薬局でも353億4,912万ウォン(10.1%)の利用があり、総合病院では291億7,432万ウォン(8.3%)、上級総合病院では170億9,939万ウォン(4.9%)が利用されて(2)生殖補助医療の経済的負担軽減制度①不妊治療の国民健康保険における療養給付適用国民健康保険において、不妊夫婦の生殖補助医療を行った際、生殖補助医療の給付基準に該当する場合、生殖補助医療関連一体の療養給付費用(治療行為料、診察料、麻酔料、薬剤費など)に対して自己負担率30%を適用することとなっている。つまり国民健康保険から70%の給付が行われる。また、表8のように、体外受精には保険適用になる回数の規定がある。②不妊夫婦治療費支援事業(1)周産期医療4. 周産期医療および生殖補助医療の公的医療保障の現状
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