健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.1334保険において保険適用とされており、被保険者本人としての給付のみならず、家族給付としてもほぼ同様の給付がなされることから、周産期医療に関してはほぼ公的医療保険でカバーされることになる。SGBⅤによれば、現在、妊婦向けのドイツ法定疾病保険適用サービスには、以下のものが含まれる(SGBⅤ24c〜24i条)。① 産前ケアを含む医師による医療の提供② 分■(Entbindung)に関する給付③ 出産後の宿泊、ケア、食事の権利のある病院またはその他の施設での入院出産④ 自宅または助産師が運営する施設(助産所など)での外来出産⑤ 妊娠・出産に関連した薬、包帯、治療薬の提供 - 助産師による妊娠時・出産時・産褥期(Wochenbett)サポート⑥ 妊娠中、出産中、産褥期における助産師ケア(出産後12週間までは助産師による産後ケアを受ける権利を有するが、それ以降は医師の指示を要する)⑦ 妊娠または出産により必要となる在宅介護および家事援助(ただし、同居者がこれらの業務を実行できない場合に限る)⑧ 出産手当金(産前6週間、産後8週間)これらの出産までに最低限必要とされる費用は、自己負担なくすべて法定疾病保険でカバーされることとなる19)。ただし、胎児の染色体異常のスクリーニング検査や規定以上の超音波検診などの追加検査、入院の際に個室または家族部屋を選んだ際の個室料金、規定以上の産前産後のケアを受けた場合などについては、自己負担となる。ドイツでは、出産に関して、①産婦人科クリニック(妊娠検査から出産前まで)、②大きな病院(出産)、③助産師(Hebamme)の三者によるサポートを受けることとなるが、これら三者が連携・協働しながら出産に臨むというよりは、それぞれが段階に応じて別々にサポートする体制となっている20)。妊娠検査薬で陽性反応が出たら、まず産婦人科医(Gynäkologie, Frauenarzt)のクリニックで診察を受け、正常な妊娠であると確認されると母親手帳(Mutterpass)が交付される。この手帳は、母親の妊娠の経過を記録するカルテとしての役割を果たすもので、医師が記録し、日本の母子手帳のように母親が記録する欄は存在しない。母親はこれを常に携帯しておくことにより、緊急時にどこの病院でもこれまでの経緯等を踏まえた医療を提供してもらうことが可能となる。出産予定日は40週0日とされ、妊娠後は、通常、31週までは月に1回、32週以降は2週間に1回、出産予定日を過ぎた場合には2日に1回、41週以降は出産予定の病院で毎日妊婦検診(Schwangerschafts-Vorsorge)が行われ、多くの場合42週までに出産できるように誘発分■の予定が組まれる21)。妊婦検診では、毎回、体重・血圧測定・尿検査が行われる。初期段階で、血液検査を行い、妊婦の血液型や感染症の有無などの確認、クラミジア検査、妊娠24〜27週頃に、妊娠糖尿病のスクリーニング検査を実施し、27週目以降から毎回胎児心拍数モニタリングを行う。32週を超えて妊娠後期に入ると、B型肝炎や溶連性連鎖球菌などの検査を実施し出産に備える22)。ドイツにおける出産には助産師が大きな役割を果たし、産後の一定期間自宅へ訪問もしてくれるので、妊娠31週までのできるだけ早い時期に、信頼できる担当助産師を探す必要がある。特に、近年、助産師不足が深刻化しているため、病院や両親向けポータルサイトなどを参考にして、早めに助産師探しをすることが望まれている。また、病院や様々なところで助産師による妊婦教室や出産準備教室などのクラスが開催されている。妊娠から出産までの流れや赤ちゃんのお世話の仕方などを教わったり、呼吸法の勉強(1)産前ケア4. 産前・出産時・産後ケアの内容

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