健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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65表8  2021年11月15日からの国民健康保険適用拡大受精(別名:試験管施術)、精子を採取し女性の排卵時期に合わせて子宮内に直接注入する人工授精のすべてである。2017年10月当時の適用の対象となったのは、法的婚姻関係にある不妊夫婦で、女性の年齢を満44歳以下とし(生殖補助医療の診療開始日を基準)、体外受精については新鮮胚の場合は4回、凍結胚の場合は3回、人工授精については3回とした。その後、保険適用とする治療回数などの拡大が続けられ、2021年11月以降は表8のとおりとなっている。周産期医療の保障と同様に、生殖補助医療の公的医療保険での保障や公費による支援の導入・拡大についても、少子化が大きな影響を与えたといえる。韓国において生殖補助医療に関する代表的な法律は、「生命倫理および安全に関する法律」(以下、生命倫理法)および「母子保健法」である(イ・ギピョンほか2021:36)。生命倫理法は、2005年1月に施行されたもので、生殖補助医療に関連しては、胚生成医療機関に対する規制と生殖補助医療の当事者からの同意を得ることに関する事項が主に規定されている。1973年導入の母子保健法は、1986年に全面改訂され、その後も一部改訂を重ねながら現在に至っている。同法は、生殖補助医療に関しては、生殖補助医療の用語の定義事項など生殖補助医療と関連する生命倫理法にはない条項が規定されている。ここでは、その2つの法律における生殖補助医療に関する内容について整理したい。改正以前改正後新鮮胚7回体外受精凍結胚5回人工授精5回出所:保健福祉部(2023c)93より引用。健保連海外医療保障 No.133備考9回7回自己負担30%(満45歳以上の自己負担は50%)――生命倫理法は、そもそも関連研究活動の規律に焦点をおいて制定されたもので、生殖補助医療の施行に関する専門的な法律というわけではない。法第1条では、同法の目的は「人間と人体由来物などを研究したり、胚や遺伝子などを取り扱う際の人間の尊厳と価値の侵害や人体への危害を防止したりすることにより、生命倫理および安全を確保し、国民の健康と生活の質の向上に資すること」にあるとしている。つまり生殖補助医療との関連では、同法は、胚や遺伝子などの取り扱いについて規定している(イ・ギピョンほか2021:54)。特に第4章「胚などの生成と研究」の第20条(人間複製の禁止)、第21条(異種間の着床などの禁止)、第22条(胚生成医療機関の指定等)、第23条(胚の生成に関する遵守事項)、第24条(胚の生成などに関する同意)、第25条(胚の保存および廃棄)、第26条(残余胚および残余卵子の提供)、第27条(卵子寄贈者の保護等)、第28条(胚生成医療機関の遵守事項等)が該当する(イ・ギピョンほか2021:54-5)。同法には、生殖補助医療を行うことができる「胚生成医療機関」として活動するための要件、胚生成医療機関が生殖補助医療を行う際の関係当事者に対する説明の義務と同意を得る義務などが規定されている。これらの規定により、体外受精において許容できることとできないことを区分する基準、生殖補助医療における女性の健康を守るための遵守事項、胚と生殖細胞の適切な管理のための遵守事項などが明確に法に示されたことに重要な意義をもつ(イ・ギピョン2021:58)と評価されている。母子保健法は28条からなり、その目的を「母性および乳幼児の生命と健康保護、健全な子どもの出産と養育を図り、国民保健の向上に資すること」としている。生命倫理法と同じく、同法が生殖補助医療のための専門的な法律であるというわけではない。しかし、同法は下記で確(1)生命倫理および安全に関する法律(2)母子保健法2. 法的背景

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