諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13358表4 低出産・高齢社会基本法に示された国家および地方自治体の責務に関する条項① 国家および地方自治体はすべての子どもが差別されることなく安全で幸福な生活を営み、教育と人格形成に役立つ社会環境を造成するための施策を講じなければならない。子どもの出産・保育等(第8条)② 国家および地方自治体は子どもを妊娠・出産・養育および教育しようとする者が職場生活と家庭生活を並行することができるよう社会環境を造成・支援しなければならない。③ 国家および地方自治体は子どもを養育しようとする者に良質の保育サービスを提供するための施策を講じなければならない。① 国家及び地方自治体は妊産婦、胎児および乳幼児に対する健康診断など母子保健の増進と胎児の生命の母子保健の増進など(第9条)尊重のために必要な施策を樹立・施行しなければならない。② 国家および地方自治体は妊娠・出産・養育の社会的意味と生命の尊厳および家族構成員の協力の重要性などに関する教育を実施しなければならない。③ 国家および地方自治体は妊娠・出産・養育に関する情報の提供、教育及び広報を実施するために必要な機関を設置したりその業務を関連機関に委託したりすることができる。① 国家および地方自治体は子どもの妊娠・出産・養育および教育にかかる経済的負担を軽減するために必要な施策を講じなければならない。② 国家および地方自治体は第1項による施策を講じ支援するために子どもの妊娠・出産・養育および教育にかかる費用の統計調査を実施することができる。 ③ 国家および地方自治体は児童の養育にともなう経済的負担軽減のために200万ウォンの「初対面利用券」(以下、利用券)を出生児に支給することができる。経済的負担軽減(第10条)④ 第3項にもかかわらず受給児童が「児童福祉法」第52条第1項第1号の児童養育施設や同項第4号のグループホームで保護措置されている場合など保健福祉部長官が定める場合には同法第42条の資産形成支援事業により開設された出生児童名義の口座に入金することができる。⑤ 利用券の支給を受けようとする保護者(児童の親権者・後見人またはそのほかの者で児童を事実上保護・養育しているもの)または保健福祉部長官が定める保護者の代理人は出生児童の住民登録住所地の管轄特別自治長・特別自治道知事・市長・郡首・区庁長に利用券の支給を申請することができる。⑥ 第3項及び第4項による利用券の支給対象・方法・時期および支給手続きなどについて必要な事項は大統領令に定める。出所:国家法令情報センターのウェブサイト「低出産・高齢社会基本法」より引用(2023.12.23アクセス)師免許所持者であり、1年の助産師教育課程を履修した場合にのみ助産師免許証を発行することとし、全国の病院を対象に助産師養成教育機関として参加するよう奨励するなど、助産人材の質的水準を向上させる動きがあった。しかし、その一方で1960年代初めにかけてのベビーブームと医療技術の発達による人口の急増が国家の政策問題として浮上した。1961年に軍事革命により樹立された朴正煕政権は、貧困にある状況からの脱出のためには経済成長が喫緊の政策課題であること、そして、その経済成長のためには、同時期に多くの発展途上国でみられた過剰人口の対処として家族計画を中心とする人口抑制政策が必要であるとの認識を示した。そのような状況を背景に、政府は、妊娠と出産の抑制を目的とした人口政策を推進した。つまり、国家は経済開発のための政策のひとつに人口抑制政策を据え、妊娠と出産よりも避妊を支援する家族計画事業を推進することとなったのである。これを受けて、政府は保健所に家族周産期医療に関しては、後に詳細を述べるように妊娠・出産診療費や諸費用に対する支援、産前・出産時・産後のケアサービスがある。ここでは、それらが公的医療保障の仕組みのなかに取り入れられていった経緯について論じたい。(1)人口抑制政策で広がった母子保健事業出産にかかわる人材として、韓国に最初に登場したのは「産婆」であった。1900年代の前半から産婆を養成する仕組みができていたが、1900年代半ばである1951年、国民医療法が制定され、その際に助産人材の不足を背景に、短期過程(6か月〜2年)の「産婆養成所」を卒業した「産婆」に対し、助産師免許証を発行して助産任務を法令化した。その後、1961年1月に政府は「国民医療法」を改正し、助産にかかわる人材について、正規看護学校を卒業した看護Ⅱ. 周産期医療の保障の概要1. 周産期医療に対する公的医療保障の歴史的経緯
元のページ ../index.html#61