55健保連海外医療保障 No.133年からは15%)に相当する金額を国民健康増進基金から支援していた。そして2007年からは当該年度の全体保険料の予想収入額の14%は国庫から、当該年度保険料予想収入額の6%は健康増進基金(ただし、たばこ負担金2)の予想収入額の65%以内)から支援している。給付の形態としては医療それ自体を保障する現物給付と医療費の償還制度である現金給付の2つの形態があり、現物給付を原則とし、現金給付も行っている。現物給付には加入者および被扶養者の疾病・負傷・出産などに対する療養給付および健康健診があり、現金給付には療養費、障害者補助機器給付、妊娠・出産診療費などがある(表1)。加入者または被扶養者が療養給付を受ける時には、その診療費用の一部を本人が負担する。入院の場合の療養給付は診療費総額の20%、外来の場合のそれは療養機関の種別により30〜60%となっている(表2)。韓国では公的医療保険に適用される療養給付の範囲となる項目が日本に比べると狭く、保険給付の対象とならない非給付項目が多い。また、混合診療が認められている。これらのことから、医療費の自己負担が高額になりやすい傾向がある。たとえば、MRIの場合、保険適用は8つの疾患に制限され、その8つの疾患以外でのMRI利用の場合には、保険外となり全額自己負担になる。これはひとつの例であるが、このような高額になりやすい自己負担の軽減のために、民間の医療保険に加入する人々が多い。低所得者の医療については、以下で述べる医療給付法に基づく医療給付がある。医療給付は、公的扶助である国民基礎生活保障の給付のひとつであり、その具体的な給付方法は医療給付法に定めている。なお、国民基礎生活保障受給者以外の同法に定める低所得者もこの医療給付の対象となっている。1970年代以降、経済開発計画の推進によって急速な経済的成長を遂げると同時に、農村から都市への人口流入や農村と都市の格差、階層間の所得格差、公害問題、経済成長を第一に追求したことによる生活基盤整備の遅れなどの社会問題などが浮上した。特に、1970年代後半には低所得層の人々が治療費を負担することができず医療を受けられないことが大きな社会問題となった。このような状況に対処するために当時の大統領であった朴正煕は、1976年2月に「自ら治療を受けられる生活水準の人々はひとまず置いて、その水準以下の人々が医療サービスを受けられるようにセマウル診療券3)を拡大し、段階的に医療保険を実現すべき」(李2011:96)として、まず低所得層の医療問題に対し第4次経済開発5か年計画(1977〜81年)期間中に対策を立てるよう指示した。これを受けて社会保障審議会において「国民医療慈恵の拡大策」を打ち出し、1977年に医療保護法が制定されることとなった。「医療保護」というのは、すでにあった生活保護法(1961年制定)の保護のひとつであった。医療保護法は,その医療保護の運用について別途制度を設けたもので、その対象を生活保護対象者だけではなく、社会福祉施設入所者、被災者、国家有功者とその家族などが医療を受けられるようにするものであった。しかし、制度施行初期の医療保護対象者は、診療地域および診療日数や利用できる医療機関などに制限があり、保護水準も健康保険に比べて低かった。これらの制限を解消するために、保護期間や水準などを段階的に拡大していき、継続的にその保障性を強化する制度改善を行っていった。なお、2000年の生活保護法の廃止、国民基礎生活保障法の導入にともない、医療保護は医療給付として実施されている。(3)保険給付の内容2. 医療給付の概要(1)公的扶助としての医療給付の導入経緯
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