諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13354れた。それ以降、強制適用にむけた医療保険法改正(1970年)を行うものの施行令の準備過程で実施が保留される状況などがあったが、1976年12月に強制適用を骨子とする医療保険法が公布され、1977年から組合方式で施行されることとなった。まずは一定規模以上の事業所から強制適用を開始し、段階的にそれを拡大していった。一方で、事業所で働く人々以外の農漁村の人々や自営業者にはなかなか適用が広がらない状況が見られた。そこで政府は自治体のモデル事業の実施・拡大を進め、1980年代に農漁村や都市住民に対する医療保険の導入を確立した。このような流れを背景にして、1989年に全国民医療保険のための体制を整えることとなった。全国民医療保険を実現させた当時は、医療保険の保険者が数百余りの組合によって分離運営されていた。そこで、多数の保険者によって運営されている医療保険の管理体制を単一保険者に統合運営することによって運営の効率性と保険料負担の公平性を確保するとともに、疾病の治療のほかに予防・健康増進などを含める包括的な医療サービスを提供することで、国民健康の向上を図ることとし、1998年に医療保険法を廃止して国民健康保険法を制定した。これにより、保険者として国民健康保険公団を創設し、1998年から2000年の間に保険者をそれに統合していった。また2003年には制度内で分離して計上してきた地域加入者と職場加入者の財政の統合も実施された。国民健康保険は、国民の疾病・負傷についての予防・診断・治療・リハビリテーション、出産・死亡および健康増進について保険給付を実施することによって、国民保健の向上と社会保障の増進を図る(法第1条)社会保険である。国民健康保険の保険者は、国民健康保険公団であり、被保険者は、職場加入者と地域加入者に区分される。職場加入者とは、一人以上の事業所の被用者と使用者、公務員、私立学校教職員およびそれらの被扶養者である。地域加入者は、職場加入者とその被扶養者以外の人々であり、そこには失業者や非正規労働者、自営業者、フリーランサー、農漁業従事者、退職高齢者などの人々もこの地域加入者に含まれる。韓国の公的医療保険は、この国民健康保険ひとつであるが、その被保険者を区分する理由は、加入者の類型により保険料の賦課システムが異なるためである。2023年9月現在、加入者全体は、約5,143万4,000人であり、そのうち職場加入者が約1,988万9,000人(38.7%)、被扶養者が約1,691万3,000人(32.9%)、地域加入者が1,463万2,000人(28.4%)となっている。また、保険料率については、職場加入者と地域加入者で異なっている。職場加入者の場合は、賃金(報酬月額)に保険料率(7.09%[2023年])をかけて算出する。保険料負担のあり方については、被雇用者の場合、算出された保険料を使用者と被雇用者で2分の1ずつ負担し、公務員の場合は、国と加入者で2分の1ずつ負担する。私立学校教職員の場合は、加入者が50%、学校が30%、国家が20%を負担することとなっている。地域加入者の場合は、対象範囲が広範囲であるのみならず、所得の形態が多様であり自営業などの所得把握の難しさがあることから、世帯の所得や財産、自動車や生活水準および経済活動参加率などを反映して算出された保険料賦課点数に、点数当たりの金額(208.4ウォン)をかけて算出することとなっている。財源については、加入者および使用者から徴収した保険料と国庫および国民健康増進基金などの政府支援金をその財源としている。特に地域加入者に関連する財源については、1988年の地域医療保険を初めて実施した当時から、保険料負担を軽減させるための保険料の一部と保健事業運営にかかる管理運営費を国庫から支援してきた。2002年からは、「健康保険財政健全化特別法」(2002年1月制定)により、地域加入者に対する保険給付費用と地域加入者の健康保険事業に対する運営費の40%(2005年から35%)に相当する金額を国庫から、10%(2005(2)適用対象・保険料・財源
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