健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
51/78

注1) 性と生殖に関する健康と権利(Sexual Reproductive Health and Rights:SRHR)のことで、すべての人がセクシュアリティと望む時に望むだけの子どもをもつことを自分で決められる権利を意味する(日本産科婦人科学会 online)。2) 0〜19歳および85歳以上の初期診療は、地域差はあるがほぼ無料である。医療費の自己負担の上限は外来治療が年間1,400クローナ(約20,000円)、入院費は1日130クローナ(約1,800円)、医薬品は年間2,850クローナ(約40,000円)。一般歯科治療は23歳まで無料(Sveriges Kommuner och Regioner online)。同国で目的をもって1年以上滞在する外国からの移住者は(留学生や駐在員含む)、住民登録を行いパーソナル・ナンバー(10桁)が付与されると、スウェーデン国籍を有する者とほぼ同等に社会保障を受けることができる。レギオン(広域自治体)は、難民認定申請者や一部の外国人に対しても、必要な保健医療サービスを提供する義務を負う。さらにレギオンは、難民認定申請者および在留資格のない外国人(papperslösa)にも、緊急度が高い医療や周産期医療、避妊指導を提供する義務がある(Socialstyrelsen 2022a)。諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障合法化されていた。6) 1960年代には婦人科検診での細胞検査はルーチン検査となり、1967年から20〜49歳のすべての女性は4年に1度、細胞検査を受けることとなった。助産師教育を拡充し、助産師は細胞検査の役目を医師から引き継いだ(Intressegruppen för Mödrahälsovård inom SFOG 2016)。助産師としての国家資格を得るためには、大学で4年半学ぶ必要がある。まず、看護師養成課程(3年制・学士)を修了して保健福祉庁から看護師の資格を取得後、助産師養成課程(1年6か月・修士)を修了して助産師の資格を得る。現在、国内の11大学に助産師養成課程が設置されている(Svenska Barnmorskeförbundet online)。7) スウェーデンの医療制度・施設の概要については、「第2章 第3節 スウェーデン王国 社会保障施策」『2021年 海外情勢報告』定例報告. 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/22/)が参考になる。8) Lengquistら大学病院産婦人科専門医を中心とする医師チームは、経腟分■時の痛みが母子双方の健康面に与えるデメリットを指摘している(Lengquist et al. 2016)。9) 出産は妊婦とそのパートナーが協力して行うという考え方が浸透しており、パートナーは入院時から付き添って出産に立ち会い、産後も産婦人科の宿泊施設で母子と共に過ごすのが一般的である。パートナーには10日間の出産休暇(賃金の約80%を保障)が付与されている(かつては父親休暇という名称であったが、同性カップルに異性カップルと同等の権利を保障するために改正された)。出産休暇明けも2人同時に育児休業を取得して子育てに専念するカップルも多い(子ども1人につき、両親それぞれに240日ずつ付与される育児休業期間のうち、30日は両親が同時取得可能)。10) 1950年代初めにスウェーデンで吸引器具の開発が始まり、1954年に産科クリニック用第1号が完成した(Kallin 2014)。11) 保健福祉庁によると、生後2か月で母乳を与えられている子どもの割合は82%程度で過去5年間変わらず、生後6か月では同数値65%である。また、生後8〜12ヶ月の子どもへの授乳はより一般的となってきている。生後8か月で母乳を与えられた子どもは、2010年生まれでは健保連海外医療保障 No.13348己負担で、産前の助産師面談2回と分■予定日4週間前から助産師2名の待機、産後ケア(10日)というベーシックコースで、5万クローナ強(約72万円)かかるという(Vårdfokus 2023-11-30)。レギオンの分■拠点病院では、事前に受入れが確定しないことも起こり得るが、同助産院では保証される。一部の人にとっては、選択肢の一つとなるかもしれない。しかし、新たな社会格差が生まれるといった批判的な見方もあり(Dagens Nyheter 2023-11-27)、今後の動向を注視していく必要があるだろう。3) vårdは治療やケアを意味することから、本稿では、各医療機関の役割を考慮に入れ、文脈に応じて、診療、健診、ケア、医療と和訳している。4) 就学前学校(保育所)の対象年齢は1〜5歳で、6歳を迎えた秋学期から、基礎学校(小・中学校)で開設されている、1年生に上がる前の準備学級(通称0ゼロ年生)。5) 妊娠18週以内は、中絶の選択を女性に委ねられることと規定した。中絶は1938年に条件付きで

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る