47健保連海外医療保障 No.133の待ち期間には地域差があるが、不妊治療にも医療保証を適用して、待ち期間を3か月以内にするよう取り決めているレギオンもある。それ以外のレギオンでの待ち期間は一般的に長い(1177.se)。レギオン指定の医療機関での不妊治療費には、一般の医療費(外来)と同じルールが適用される。医療費はレギオンにより若干の違いはあるが、外来診療で1年間の医療費の自己負担上限額一人あたり1,400クローナ(約20,000円)が設定されており、不妊治療も含め、それ以上は無料となる。民間クリニックの方が待ち期間は短く、プライマリ・ケアからの紹介状も必要ないが、医療費は基本的に自己負担となる(1177.se)。保健医療全般における社会的平等・男女平等の達成を目指してきたスウェーデンでは、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から女性の健康の実現に向けて注力してきた。すべての女性を包摂する妊娠期から子育て期への切れ目のない支援のあり方は示唆に富むといえる。その一方で、近年、同国の産科医療(分■機関)現場では、さまざまな問題が浮上している。政府と自治体連合(Sveriges Kommuner och Regioner:SKR)は、2015年から2023年にかけて、産科医療の改善と女性の健康支援強化を目指し、約100億クローナ(約1,400億円)を充てる包括的な取組みを行った。産科医療をより患者中心で、公平にアクセスできるものとすべく対策を打ち出すためである。その一つとして、保健福祉庁は、産科医療に関する国の計画と目標、フォローアップ指標案(S203/00406)ならびに妊婦保健医療と産後ケアを含む産科医療に関する国のガイドライン(S2022/05135)策定を担うこととなった(Regeringskansliet & Sveriges Kommuner och Regioner 2023)。産科医療の現場では、コロナ禍が追い打ちをかけ、2021年秋、「産婦人科の危機(BB-krisen)」と言われる厳しい状況に直面した19)。同国の保健医療水準は世界でもトップクラスを誇るものの、コロナ禍とインフレの波により医療における待ち期間はさらに増えた。政権は、2022年10月に中道左派(社民党・環境党連合)から中道右派(穏健党・キリスト教民主党・リベラル党連合)に交代したが、保健医療システム改善構想の一環である産科医療と女性の健康をめぐる課題対応についての検討は進められてきた。2023年12月22日、政府と自治体連合は、産科(分■機関)と女性の健康分野における協定を締結し、2024年度の予算として、15.35億クローナ(約220億円)を充てることとした。今後、取組みを強化すべきとされる分野・目標は下記の通りである20)。・切れ目のない周産期医療・すべての女性を包摂し、個人のニーズに合う産後ケア・助産師・医療スタッフの技能向上・女性のさまざまなニーズに対応するために妊産婦保健医療と産科医療における知識・能力向上・知識に基づき安心できる、保健・医療スタッフにとって良好な労働環境のもとで、すべての女性に患者中心で公平にアクセスできる医療ケアを提供する働き方・さまざまなグループの女性格差を減らす、より平等な妊産婦保健医療と産科医療・若年女性・女性の性とリプロダクティブ・ヘルスを含む健康と病気に関わる保健医療 −性暴力や女子割礼の被害者ケア・地方(過疎地域)の妊産婦保健医療と産科医療の供給強化(Regeringskansliet & Sveriges Kommuner och Regioner 2023, pp.7-12)。産科医療において新たな動きが生じている。2024年1月、第2の都市ユーテボリに、助産師チームで正常分■を取り扱う、スウェーデン初の民間助産院(BB Gårda)が開設されたのである(Barnmorsketeamet.se)。出産費用は自Ⅴ. 最近の動向
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