諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13346る。若年女性の中絶の減少は、長期有効な避妊方法が用いられていることに因る。未産婦には避妊リング(spiral)を勧めるのが一般的となっている。2017年の医薬品給付等に関する法律(18 § lag(2002:160)om läkemedelsförmåner m.m.)の改正により、20歳以下の女性の避妊具が無償化されたことも、若年者の中絶の減少に繋がったと考えられる。また、なかには無償化の対象年齢を25歳までとしているレギオンもある(Socialstyrelsen 2023b)。早くから子どもたちへの性教育に注力してきたスウェーデンでは15)、全国に子ども・若者の性とリプロダクティブ・ヘルスをサポートする公的医療機関であるユースクリニック(Ungdomsmottagning)が整備されている。13〜25歳の若者には、避妊具や中絶等を含む医薬品が無料で処方される。居住地以外のクリニックを選択することも可能で、オンラインでの相談も行っている(Ungdomsmottagning online)16)。スウェーデンで提供されている生殖補助医療は、主に体外受精・胚移植(IVF)と顕微授精(卵細胞質内精子注入法)である。2019年1月、IVFにおいて、提供された精子・卵子・胚を用いることが認められ、両親のうち一人は生まれてくる子どもの血縁でなければならないという要件は撤廃された。同国の生殖補助医療制度については、関連する親子法とともに早くから議論が始まり、法改正が重ねられてきた。1984年に人工授精に関する法律(1984:1140)、1988年には体外受精に関する法律(1988:711)が成立した。これら2つの法律は、2006年に遺伝的な一体性に関する法律(2006:351)に統合された17)。2016年の法改正により、単身女性にも人工授精が認められるようになった。ただし、独身であることが条件となり、法律婚・事実婚の継続状態で、パートナー以外と家族をつくることは認められない(RFSL online)。多様な家族のあり方を認めているスウェーデンでは、女性カップルも2005年から生殖補助医療を受けられるようになった。2009年の婚姻法改正により、同性婚が認められているが、代理母出産は認められておらず、男性カップルが子どもを希望する場合、養子を迎えるか外国で代理出産を依頼することになる。1984年に制定された人工授精法により、子どもに出自を知る権利を認めており、精子あるいは卵子提供者の個人情報は、将来の子どもの権利を保障するために保存される(Statens Medicinsk-Etiska Råd online)。公立医療機関での不妊治療(生殖補助医療)の対象年齢は、治療時26歳以上(本人・パートナーとも)、40歳未満(本人)である。1年以上妊娠しない状態(不妊)が続いていることが治療の条件であるが、次のいずれかの理由で妊娠が困難と考えられる場合も治療の対象となる。・本人が36歳以上、月経不順、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)あるいは子宮内膜症、腹部手術後の合併症がある、あるいはカップルのうちいずれかに腫瘍があり分子標的治療を受けたことがある(1177.se)。不妊検査・治療は、総合病院の婦人科、婦人科クリニック、不妊治療専門クリニックで行われている。地域の診療センターの医師に相談し、専門医への紹介状を依頼することもできる。医療ポータルサイト1177の相談窓口を通じて尋ねることも可能である(1177.se)。なお、2019年から、民間クリニックでも、提供された精子を用いた体外受精を行うことが認められている(RFSL online)。医療(ケア)保証の原則(Förordning om vårdgarantin)18)として、同国でパーソナル・ナンバーを持つ者は、国内いずれの地域でも当該地域居住者と同じ条件で医療サービスを受けられることを保証している。不妊治療についても同原則が適用され、希望する医療機関で治療を受けることが可能である。治療を受けるまで2. 生殖補助医療
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