健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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45健保連海外医療保障 No.133母子保健医療サービスは、育児、授乳11)、食生活、生活習慣、親子関係、パートナーとの関係といった子育て家族の生活を包括する支援に加え、子どもに病気や障がいがある場合、子ども・若者精神医療センター(BUP)と子ども・若者ハビリテーリングセンター、総合病院の小児科が親子への支援を行うといったニーズに応じた特別なサポートを提供している。スウェーデンの親・子育て支援体制は、保健を目的としてすべての親を対象とする「ユニバーサル支援」と、何らかのリスクのあるグループを対象とする「選択的支援」、子どもの心身に問題があるといった特定の親を対象とする「ターゲット支援」の3つで構成されている(Socialstyrelsen 2015)。妊娠期から子育て期にわたる切れ目ないサポートを、レギオン(広域自治体)の管轄である保健医療サービスとコミューン(基礎自治体)が管轄する社会福祉部門が連携し、窓口を一元化して提供する「ファミリーセンター(familjecentral」が全国約300か所に設置されている。ファミリーセンターでは一般的に、助産師外来(旧妊婦健診センター)と乳幼児診療センター、行政の社会福祉サービス、オープン保育所12)が併設され、親同士の交流の場も提供している。ファミリーセンターのスタッフは、小児看護師、就学前学校(保育所)教員、保育補助者、社会福祉部門の家族相談員(ソーシャルワーカー)で、兼任スタッフである医師、公認心理師、歯科衛生士、図書館司書等と連携している(Föreningen för familjecentralens främjande online)。同国の合計特殊出生率は、コロナ禍の影響もあり、2022年に過去最低レベルの1.52へと低下した。2023年の第1四半期〜第3四半期までの数値は1.50とさらに落ち込んでいる(SCB 2023-11-30)13)。2022年の出産件数は約103,340件(出生数105,670人)で、第1子出産時の母親の平均年齢は29.8歳で、第2子以降出産時の平均年齢は32.4歳である。同年に出産した女性のうち40歳以上は4.8%で、20歳未満は1.2%である(Socialstyrelsen 2023c)。保健福祉庁は2008年以降、死産の定義を「妊娠22週目以後、胎児が子宮内で死亡あるいは出産時に死亡」としており、その数は2022年で1,000人あたり3人である。出生後27日以内の死亡率は、歴史的にみると激減し、2005年以降、1,000人あたり1.3〜1.7人である。また、生後1年未満の死亡率は、1,000人あたり2.2人(2022年)で、国際的にみて非常に低い(Ibid.)。国内でも地域差はあるが、誘発分■は増加傾向にあり、統計を取り始めた1993年では全体の8%で、2022年には27%を占めている。2020年に多くのレギオンで分■時期のガイドラインがそれまでの42週目から41週目に改正されたことから、2020年に数値が上昇した。帝王切開の割合は2020年の17.9%から2022年には19.1%と上昇している。緊急帝王切開の割合は2020年の9.7%から2022年には10.7%に、計画帝王切開の割合は同7.6%から7.9%に増えている(Ibid.)。正常分■であれば自宅出産も認められており、事前に居住地域で対応可能な助産師の有無を確認するか、かかりつけの助産師外来で相談しておく必要がある。自宅出産の場合、助産師の分■介助料金等がかかり有料だが、レギオンによっても条件は異なる(1177.se)14)。妊娠中絶については、1975年以降、妊娠18週目までは本人の意思で行うことが認められている。19週目以後は保健福祉庁の許可が必要となる(Lagen.nu)。中絶薬の使用は、1990年代に導入されて以降、急速に増加した。現在、妊娠7週間以内の中絶のうち90%は中絶薬が用いられる。人工妊娠中絶件数(2022年)は、1980年代以降大きく変化していないが、ティーンエージャーの中絶件数は減少しており、15〜19歳の女性1,000人あたりの中絶件数は、2006年では25件、2022年は8件である。他の年齢層(20〜44歳)では、25歳以上の中絶件数が微増していⅣ. 妊娠・出産を取り巻く現状1. 妊娠・出産をめぐる状況

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