健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13344表3  乳幼児診療センターが提供している保健医療サービスは全体の約1%だったが、同数値は1980年代後半の一時期を除き上昇し続け、2020年には43%を占めている。硬膜外鎮痛法を受ける人の割合(2020年)は、経産婦では28%であるのに対し、初産婦では64%と高い。同数値は、基礎学校卒(9年間の義務教育)では31%、大卒(あるいはそれに相当)では45%と学歴による差がみられ、また地域差もある(Socialstyrelsen 2021a)。分■後の平均入院期間は、2019年で正常(経腟)分■後1.7日、帝王切開術後2.9日で、経産婦の入院日数は初産婦よりおよそ1日短い(Socialstyrelsen 2022a)。母子ともに健康であれば、出産後6時間程で帰宅することも可能であるが、その場合、数日後に産科で健診を受ける。出産後は、同じ病院内で産後ケアを担う“BB”(子の誕生を意味するbarnbördの略。本稿では産婦人科と呼ぶ)へ移る。先述の通り、出産にかかる費用は、実費以外は無料である。例として、ストックホルム・レギオンの分■拠点病院の一つ、ダンデリィード病院(Danderyds sjukhus)の産科の入院費は、1日あたり妊婦130クローナ(約1,800円)、出産に立ち会うパートナーは250クローナ(約3,500円)である。出産後、家族全員で過ごす産後ケア施設ではパートナー(または付き添い)には1泊800クローナ(約11,400円)かかる9)。同料金には、食費・飲み物代、ベッド・布団・シーツ・タオル利用料が含まれる(BB Stockholm online)。産婦人科のスタッフは、助産師、准看護師、医師(産科医・小児科医)で、分■方法次第で、担当スタッフが決まる。吸引分■10)あるいは帝王切開を行った場合、医師が担当することが多い。ニーズに応じて、理学療法士やカウンセラーによる治療も行われる(1177.se)。産科・産婦人科退院後、看護師が母子の家庭を訪問する場合が多いが、産婦人科で健診を行うこともある。新生児が地域の小児保健医療(barnhälsovården:BHV)に登録されるまでの最長7日間、産婦人科は新生児の健康に責任を負う。それ以降は、地域の乳幼児診療センターが乳幼児の健康診査と保健指導を行う(表3)。出産後8〜16週間は助産師外来の助産師によるフォローアップ健診を実施し、異常がある場合、医師、公認心理士あるいは理学療法士と連携する(Socialstyrelsen 2022a)。乳幼児保健医療サービスは、産婦人科と連携しているため、退院後、地域の乳幼児診療センターの看護師から産婦に連絡が入る。産婦から同センターに連絡を入れるケースもある。すべての子どもが就学前クラスに入学するまでの保健医療(歯科健診含む)サービスの提供を受け、子どもの成長や発達を見守る乳幼児診療センターは、子どもの心身の健康に関する相談窓口でもある。先述の助産師外来と同様に、ポータルサイト1177を通じて最寄りの乳幼児診療センターを検索し、希望すれば変更することもできる(1177.se)。産科退院後1〜2週間以内看護師による家庭訪問乳幼児診療センター(BVC)での看護師による健診•初期は毎週、それ以降隔週•4週目:医師と看護師による健診•6週目:ロタウイルスワクチン接種•6〜8週目:看護師によるフォローアップ調査2〜8週3〜5か月月に1回健診•3か月目と5か月目:定期予防接種6か月医師と看護師による健診8か月看護師による家庭訪問10か月10か月児健診(看護師)1歳1歳児健診(医師と看護師)(1歳までの乳児検診は13回以上)1歳6か月1歳6か月児健診(看護師)と予防接種2歳5か月〜3歳健診(1〜2回)4歳・5歳4歳児健診・5歳児健診出所:ポータルサイト1177をもとに作成(2)出産後の母子保健医療

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