健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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43図1  医療情報ポータルサイト1177「妊娠」に関するページbarnmorskemottagningen)」に掲載されている基本情報を整理したものであり、全国の助産師外来でほぼ統一された保健医療サービスが提供されているといえる。外国生まれの者が人口の約2割を占めるスウェーデンでは、行政サービスを多言語で対応する仕組みを整えている。同サイトの情報も、例としてストックホルムのサイトでは、18言語に加え、やさしいスウェーデン語の計19言語で提供している。分■機関である産科(産院)(förlossningsvård, förlossningsklinik)は、レギオンの分■拠点病院(大学病院や民間病院含む)に設置されている。全国に42の産科があり、毎年11〜12万人の子どもが生まれている(Socialstyrelsen 2022b)。産科の選択については、かかりつけの助産師から事前に説明を受ける。陣痛が始まったら、その産科にまず電話をかけて受け入れの確認をする。事前に産科情報を得ていない場合、先述の医療情報ポータルサイト1177で近隣の産科を探し、直接連絡することも可能である。例えば、首都ストックホルムには、7つの分■拠点病院があり、ポータルサイト1177のストックホルム版で、各産科の電話番号(24時間対応)とアクセス情報とともに、院内の様子を収めた動画が公開されている。出所:https://www.1177.se/barn--gravid/graviditet/健保連海外医療保障 No.133同サイトでは、出産予定日の1週間前には「出産信書(förlossningsbrev)」を書いておき、産科の担当スタッフに手渡しすることを推奨(任意)している。産科スタッフは、助産師外来から入手した妊婦のカルテで必要な情報を確認できるが、同信書を通して、分■に際しての妊婦自身の希望(産痛緩和や分■体位)や不安に思うこと等を伝えることができる。出産に立ち会う妊婦のパートナーの思いなども記載しておくことが勧められている(1177.se)。産科での正常分■を扱うのは助産師で、まず胎児の心音と子宮内の胎児の位置、子宮口の開きを確認し、血圧を測り、尿検査を行う。分■室には分■台(ベッド)と安楽椅子、酸素・亜鉛化窒素吸入器が備え付けてあり、また分■室に温水プールを備え、水中出産が可能な所もある。分■担当のスタッフは、助産師1名と准看護師1名であることが多いが、助産師が2名の場合もある。産科には産科医も常駐し、状況に応じて対応する。医療スタッフはシフト勤務のため、分■室で助産師が交代することも一般的である(1177.se)。分■の際の産痛緩和(smärtlindring vid förlossning)は、1971年の国会決議以降、産婦の権利として保障されており、現在、産科では、下記の方法で行われている。鎮痛薬(lustgas)の吸入は北欧諸国と英国において一般的とされる(Lengquist et al. 2016)8)。・薬剤を使わない方法:リラクゼーション・ヨガ、蒸留水皮下注法、経皮的電気神経刺激(TENS)、鍼■、マッサージ、温水浴など・薬剤による鎮痛方法:静脈内パラセタモールと硬膜外麻酔、オピオイド、鎮痛薬(lustgas)吸入、傍頸管ブロック、陰部神経ブロック、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔(Lengquist et al. 2016; 1177.se)1970年代の始めに硬膜外鎮痛法を受けた産婦2. 出産・産後の保健医療サービス(1)出産・入院

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