諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13340表1 保健医療システムの運営:国・レギオン・コミューンの主な役割くは、「助産師外来(Barnmorskemottagning:BMM)」に改称している(Socialstyrelsen 2022b)。ただし、同国のプライマリ・ケアの一環である助産師外来はあくまで産前(一部産後)ケアを行う事業で、分■は取り扱わない。本稿でも、現行の制度・取組みを示す際は、「助産師外来」と呼ぶこととする。スウェーデンの周産期医療の特徴として、妊娠中から分■までを同じ助産師が担当する体制は導入されてこなかった点が挙げられる。その一方で、複数の分■拠点病院は試験的な取組みを行っている。ストックホルム・レギオン(広域地自体)では、スーデル病院(Södersjukhuset)が、1989〜2016年に妊産婦保健医療・分■・産後ケアを同一部門に整備し、ABCクリニック(Alternative Birth Center)を運営した。同クリニックは、正常分■予定の健康な妊産婦を対象としていた。さらに、カロリンスカ大学病院(Karolinska Universitetssjukhuset)では、2018年に「私の助産師」というプロジェクトを立ち上げ、ひとりの妊産婦の産前、出産、産後を通して主治の助産師が担当する仕組みを導入し、2022年まで継続させた。しかしながら、これらの取組みに対する評価は分かれている。スウェーデンの妊産婦保健医療体制は総じて優れており、助産師の能力も高く、全体的にうまく機能している中、体制を変えることで医療水準が下がり、妊産婦の健康に影響を与えるリスクが生じかねないといった指摘もある(Socialstyrelsen 2022b)。また、スウェーデンでは、分■を担当した助産師が税務庁に出生届を提出するという役目を担う。同国で住民(個人)登録をしている母親から生まれた子どもは、その届出により、税務庁からパーソナル・ナンバーを付与される(Skatteverket online)。スウェーデンの保健医療保障制度における周国産期医療の位置づけを捉えるために、同国の保健医療システムを概観しておく。国と広域地自体であるレギオン(Region:全国21。 2019年にランスティングから改称)、基礎自治体であるコミューン(Kommun:全国290)が役割分担しており、国民を対象とした保健医療サービスの提供主体はレギオンである(表1)。つまり、妊娠・出産・産後を通じた周産期保健医療サービスを提供するのもレギオンである。全国に21あるレギオンは、北部、中部、ストックホルム-ゴットランド、西部、南西部、南部の6つの医療レギオン(保健医療圏)に区分されている(Sveriges Kommuner och Regioner online)。医療はレギオンの税収と患者の一部負担金でまかなわれる。保健医療保障は、保健・医療サービス法(Hälso- och sjukvårdslagen:HSL)、患者法(Patientlagen:PL)、患者安全法(Patientsäkerhetslagen :PSL)により規定される(Ibid.)。周産期の保健医療保障を規定するのは、そのうち、保健・医療サービス法(HSL 2017:30)ならびに患者安全法(PSL 2010:659)である。周産期の保健医療に関しては、国のガイドラインや原則もあり、一例として、母乳育児・乳児期の栄養に関する保健福祉庁の原則(SOSFS 2008:33)が挙げられる(Socialstyselsen 2022a)。なお、2020年1月1日に国連の「子どもの医療予算作成、保健医療関連政策・法律・ガイドライン策定レギオン(広域自治体)保健医療サービス提供特別住宅入居者・デイサービス利用者への保健医療サービス提供医薬品・(リ)ハビリテーション・障がい者向け支援機器の提供コミューン(基礎自治体)出所: Sveriges Kommuner och Regionerのホームページをもとに作成Ⅱ. 保健医療システムの概要1. 保健医療提供体制と法制度
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