33健保連海外医療保障 No.133卵子提供者には、学際的医療チームとの面談において、卵巣刺激と卵子採取の条件、およびこの技術に関連するリスクと制約について十分に説明されなければならない。また、卵子提供の法的条件、特に匿名性の原則と提供が無償であるという原則について知らされる。なお、提供に関して発生した費用は償還される(以上、公衆衛生法典L.1244-7条2項)。提供者が女性労働者の場合、排卵誘発や卵子の採取のために検査や施術等を受ける必要があるときは、使用者から休暇(autorisation dʼabsence)を得ることができる(公衆衛生法典L.1244-5条)。ヒト胚は商工業の目的で生成・使用することはできない(公衆衛生法典L.2141-8条)2021年生命倫理法により、社会保障法典L.160-8条7号が追加され、「生殖能力の保全および生殖補助医療に関連する行為および処置に関する費用」の保障が、医療保険の現物給付の対象に加えられた。ただし、「生殖能力を悪化させる疾患にかかっておらず、かつ、公衆衛生法典L.2141-11条の対象ではない被保険者について、公衆衛生法典L.2141-12条の適用により行われる配偶子の保存に関連する費用は除く」とされている。さらに、生殖補助医療の費用(社会保障法典L.160-14条1項26号、R.160-17条I-1項9号51))、生殖能力の診断および処置に必要な調査の費用(L.160-14条1項12号、R.160-17条I-1項2号)、人体の要素の採取およびその生成物の採集にかかる費用(L.160-14条1項18号、R.160-17条I-1項3号)については、利用者の自己負担が免除されている。2021年の生殖補助医療の実施状況は、フランス生物医学庁の報告書52)によれば、表11の通りである。INSEEによると2021年の出生数は742,052人であるから、生殖補助医療により生きて生まれた子の数(27,609人)は、全体の3.7%に当たる53)。2018年以降の数値を比較すると、コロナ禍の2020年を除き、生殖補助医療の利用もまたそれによる子の割合も伸びている(表12)。フランスで「痛みのない分■(accouchement sans douleur)」とは、いわゆるラマーズ法のことを指す。ラマーズ法やヒプノバーシング(accouchement sous hipnose ou hipnonaissance)、ソフロロジー(sophrolosie)といった方法は、自然な形でかつなるべく痛みのない出産を希望する妊婦に好まれるもので、いずれも基本的には出産への恐怖が緊張をもたらし、それが痛みを生むという発想から、リラクゼーションの実践を試みる、いわゆる心理的無痛分■法である。これに対して、麻酔を使用した医学的な無痛分■法(麻酔分■)もフランスでは非常に多く実践されており、通常は硬膜外麻酔(anesthésie péridurale)が用いられている。全国周産期調査54)(enquête nationa périnatal:ENP)では、痛みの緩和のため硬膜外麻酔を希望するかとの問いに対し、2016年の調査では、「是非希望する(Oui, absolument)」が64.3%、「おそらく希望する(Oui, peut être)」が21.1%、「希望しない(non)」が14.6%だったのに対し、2021年の調査では、それぞれ65.6%、17.9%、16.5%となっており、硬膜外麻酔を希望する者は多い。また、実際の痛みの緩和における硬膜外麻酔の有効性についても、「とても有効(parfaitement efficace)」と「有効(efficace)」がそれぞれ70.8%、5.1%との回答であった。(6)卵子の提供に関する規律(7)胚の受入れに関する規律(8)費用負担4. 現況Ⅶ.無痛分■
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