27健保連海外医療保障 No.133ある。通常は出生後早ければ48時間が経過した時点で、出産施設において、説明を受けた親が同意を与え、採血が行われる。また、出産後4週から8週の間に、医師または助産師と出産後の面談が行われる。この面談は義務であり、産後うつの最初の兆候やうつ病につながる危険因子を特定することと、女性またはそのパートナーの支援ニーズを評価することを目的に行われる。さらに、初産の女性、および、産後うつの兆候や産後うつにつながる危険因子の存在が確認された女性に対しては、出産後10週から14週の間に、2度目の面談が行われる。なお、産後8週目までに必ず産後健診(examen postnatal)を受けなければならない(公衆衛生法典R.2122-3条)。フランスでは、1970年代から、出産の実践に法的な枠組を設け、母子のリスクを減らそうとするさまざまな試みが講じられてきた。出産施設(maternité)の法規制は、2つの段階を経て構築されてきた。第1は、民間の出産施設についての法規制を定めた1972年2月21日デクレ72-162号26)である。制定時の担当閣外相27)の名から、Dieneschデクレと呼ばれている。同デクレにより、民間の出産施設について、分■実施許可の取得には15床以上が必要との条件が課されることになった。同年、公立施設についても同内容の規制が行われた。この法規制により、助産師が経営する小さな産院の多くは消滅した。また、公立施設では、患者数が少なく、一般医の責任の下に置かれていた地方病院の産科のあり方が問題となった。第2は、出産施設を3つのタイプに区分した1998年10月9日デクレ98-900号28)(周産期デクレ)である。妊産婦と新生児のリスクに対応した施設での受入れを可能にするため、これらに応じた区分が設けられたのである。「周産期計画1995-2000」および「周産期計画2005-2007」による補完を受け、現在では、公衆衛生法典R.6124-35条以下で、出産施設は、①タイプ1(産科のある施設)、②タイプ2a(産科と新生児科がある施設)、③タイプ2b(産科、新生児科と新生児集中治療室がある施設)、④タイプ3(産科、新生児科、新生児集中治療室と新生児蘇生科がある施設)4つのタイプに区分されている。周産期デクレにより、タイプ1の施設数は大きく減少した。代わりにタイプ2以上の出産施設が増加しており、2020年には全施設の62%、ベッド数全体の76%、出産件数の81%を占めるに至っている30)。また、産科のベッド数も減少を続けており、2022年には14,427床まで減っている。前述の通り、出生数は近年減少を続けているが、ベッド数の減少により、ベッドの使用率は大幅に上がっている。1床当たりの年間出産件数は、1975年の23から2020年には49に増えた。また、平均在院日数も大きく短縮しており、1975年の8.0日から2020年には4.4日となっている。出産施設の設置主体別では、2010年から2020年の間に、公立施設での出産割合が65%から71%へと増え、民間営利施設での出産割合が27%から21%へと減少している。2020年の各タイプの総数に占める公立施設および民間非営利施設の割合は、タイプ1では63%、タイプ2では78%、タイプ3では100%に上っている。より規模の大きい、専門性の高い出産施設への出産の集中も進んでいる。2020年におけるタイプ別の出産施設(フランス本土のみ、軍の医療施設を除く)1施設当たりの平均出産件数は、タイプ1が774件、タイプ2aが1,410件、タイプ2bが1,961件、タイプ3が3,142件である。年間1,500件以上の出産を実施した施設数の割合は、1996年の13%から2020年には37%に伸び、逆に、出産件数が年間300件未満の施設数の割合は12%から3%へと減少した31)。(2)出産施設の状況29)Ⅴ. 出産医療提供体制1. 出産施設(1)法的な枠組
元のページ ../index.html#30