健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13326までに、医師または助産師に初回の受診をする必要がある。このとき、医師または助産師は、妊婦のVitaleカード(フランスにおけるICカード保険証)を使って、オンラインで妊娠届(déclaration de grossesse)を作成し、妊婦が加入する医療保険金庫と家族手当金庫(農業制度の加入者の場合には農業共済金庫(MSA))に送信する。初回の健診後、医師または助産師から「初回出生前健診」の書類が渡される。これは3枚綴りとなっており、1枚目と2枚目を家族手当金庫へ、3枚目を医療保険金庫へ、それぞれ妊娠14週の末日までに提出しなければならない。この届出により、他の要件を満たしていれば、家族手当金庫から出産特別手当の支給を受けることができる。また、医療保険金庫から出産準備ガイド(«Ma maternité - Je prépare lʼarrivée de mon enfant»)の交付などの情報提供が行われる。この初回の妊婦健診において、医師または助産師は、精密臨床検査を行う。この検査では、①初めての妊娠の場合には、血液型とRh型の判定、②風疹、B型肝炎、トキソプラズマおよびジフテリアの検査、③初回のエコー検査(胚を測定して妊娠の日を確定するとともに、胚の数を定めるので、日付確定(datation)のエコー検査と呼ばれる)、④HIV検査、⑤未受診の場合には、子宮頚部・子宮体部塗抹標本検査が行われる。妊娠4か月目には、2回目の妊婦健診が行われる。また、妊娠4か月目に、妊娠期間中の支援の必要性を評価するため、医師または助産師によって出生前の早期面談(entretien prénatal précoce)が実施される。これは、一般的には、情報提供のための面談の形式がとられる。2006年から推奨されていたが、実施率が低かったため、2020年からは実施が義務化されている。また、トキソプラズマ症の免疫がない場合は、この2回目の妊婦健診のときから、トキソプラズマ血清診断が毎月繰り返し実施される。妊娠5か月目には、3回目の妊婦健診が行われる。このとき、胎児の発育状況と(妊婦が希望する場合には)性別を確認するための、2回目のエコー検査(形態学的なエコー検査と呼ばれる)が行われる。妊娠6か月目には、4回目の妊婦健診が行われる。このとき、①HBs抗原検査、②全血球計算(血算)、③Rh陰性か輸血を受けたことがある場合には、不規則抗体の探索が行われる。妊娠7か月目には、5回目の妊婦健診が行われる。また、妊娠7か月目から9か月目にかけて、全部で7回の出産・子育て準備セッション(séance de préparation à lʼaccouchement et à la parentalité)が行われる。これは、医師または助産師によって個別または集団で実施される。妊娠8か月目には、6回目の妊婦健診が行われる。このとき、3回目のエコー検査が行われ、子宮内での胎盤の位置と胎児のポジションが確認される。また、このとき、麻酔前の診察(consultation pre-anesthesique)を必ず受けなければならない。無痛分■を希望しない場合であっても、この診察を受けることは義務である。さらに、この診察のとき、またはそれ以降に、2回目の血液型の特定が行われる。そして、Rh陰性か輸血を受けたことがある場合には、再度、不規則抗体の探索が行われる。妊娠9か月目には、最後となる7回目の妊婦健診が行われる。もし6回目の妊婦健診の際に2回目の血液型の特定を行っていなかった場合には、このときにそれが行われる。また、Rh陰性か輸血を受けたことがある場合には、もう一度、不規則抗体の探索が行われる。出生3日目に、新生児健診(dépistage néonatal)が行われる。これは新生児に、稀だが早期に対応しなければ重篤となり得る13の疾患がないかどうか、また、永久難聴ではないかどうかを確かめるものである。新生児健診の費用は無料である。新生児健診の実施には親の同意が必要で(2)妊娠4か月目以降3. 出産後の健診

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