健保連海外医療保障 No.133助医療を行う機関に対し、移植した卵子、精子、胚等について記録し、患者が記録を追跡することが可能な措置を講ずることを義務付けている。また、民法は、生殖補助医療と関連して、親子関係について定めている。例えば、民法1591条は、母は、子を出産した女性のことをいう、としている。また、2018年7月に精子提供者登録法が発効している。35) Richtlinie zur Entnahme und Übertragung von menschlichen Keimzellen oder Keimzellgewebe im Rahmen der assistierten Reproduktion, umschriebene Fortschreibung 2022(10.3238/arztebl.2022.Rili_assReproduktion_2022). 生殖補助医療に関する最初の連邦医師会のガイドラインは、1985年に策定されたRichtlinien zur Durchführung von In-vitro-Fertilisation(IVF)und Embryotransfer(ET)als Behandlungsmethode der menschlichen Sterilitätであった。その後2度の改正を経て、2006年に、(Muster-)Richtlinie zur Durchführung der assistierten Reproduktion ‒Novelle 2006‒に改訂され、2022年より現在の指針(ガイドライン)となっている。36) 州医師会は公法上の団体であり、医師として職業活動を行う者は、活動を行う州の医師会の会員とならなければならない。国内17ある州の医師会が連邦医師会を構成している。37) 南貴子(2011)「生殖補助医療の法制度化における課題」愛媛県立医療技術大学紀要8巻1号11頁。38) 胚保護法は、生殖補助医療を受ける女性について法律上の妻に限定する規定は存在しないが、連邦医師会は、以前から法解釈により、法律婚の場合以外にも、安定したパートナーシップで結ばれた共同生活を送る異性カップルであり、男性が自身の子として受け入れる覚悟があると認められる場合には、実施することができるとしていた。39) Deutsches IVF-Register e.V.(D.I.R), Geschichte(https://www.deutsches-ivf-register.de/geschichte.php 最終確認日 2024年1月13日)40) D.I.R, “D.I.R-Annual 2022”, Journal für Reproduktionsmedizin und Endokrinologie, 2023, Nr.5, S.205.1741) D.I.R(Anm.40), S.210, 212.42) 30-34歳の女性では、妊娠率39.7%、出生率31.6%であるが、41-43歳の女性では、妊娠率16.7%、出生率8.2%にまで落ち込む。2021年の早産(妊娠37週前の出産)の割合は、単児で18.0%、双子で85%、三つ子で100%であり、多胎妊娠は早産の危険性を高めることが分かる(D.I.R(Anm.40), S.228.)。43) D.I.R(Anm.40), S.195, 228.44) D.I.R(Anm.40), S.229.45) 以下の内容は、ドイツ連邦家族・高齢者・女性・青少年省ポータルを参考にした(https://www.informationsportal-kinderwunsch.de/kiwu 最終確認日 2024年1月5日)46) 小椋は、過度な子ども願望が限度を失った心理状態を引き起こす可能性があることから、子どもを望む親が有する子ども願望に冷静な目を向ける必要性があることを指摘する(小椋宗一郎(2011)「代理出産と不妊相談―ドイツにおける法と社会的実践」死生学研究15号294頁)。47) これは2019年5月に施行された「予約サービスおよびケア法(Terminservice- und Versorgungsgesetz(TSVG))により新たに追加された条項で、これに対応する形で、連邦医師会のガイドラインが「生殖補助医療におけるヒト生殖細胞または生殖細胞組織の収集および移植に関するガイドライン」へと更新された。同ガイドラインは、生殖能力制限のリスクが高い先天性(遺伝的)疾患における生殖細胞または生殖細胞組織の凍結保存についても規定している。さらに、同ガイドラインの更新にあたっては、措置に同意できない未成年患者からの生殖細胞または生殖細胞組織の収集に関する規制についても議論が行われたが、合意には至らずガイドラインへの記載は見送られた。また、卵子やヒト胚の保存やそれに関連する医療措置に要する費用が疾病保険からの給付として認められるのは、「卵子、精子細胞、または生殖細胞組織の凍結保存、ならびに生殖細胞に損傷を与える治療に対する医療措置に関する連邦合同委員会のガイドライン(Richtlinie des Gemeinsamen Bundesausschusses zur Kryokonservierung von Ei- oder Samenzellen oder Keimzellgewebe sowie entsprechende medizinische Maßnahmen wegen keimzellschädigender Therapie(Kryo-RL)」に沿った治療である場
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