健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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注1)Bundesministerium für Gesundheit, Gesetzlich-versicherte(https://www.bundesgesundheitsministerium.de/gesetzlich-versicherte#:~:text■Pflichtmitglieder%20in%20der%20GKV%20sind,(520%20Euro%20monatlich)%20liegt 最終確認日 2024年1月10日) 諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障2)Bundesministerium für Gesundheit, Daten des Gesundheitswesens 2022, S.134,137.3) Bundesministerium für Gesundheit(Anm.2), S.126. 法定疾病保険の代替として民間疾病保険に加入する者の数は、870万人台で推移しているが、追加保障として加入している者の数は着実に増加しており、2020年には2,025万人にものぼっている。4) Bundesministerium für Gesundheit(Anm.2), S.114.5) 医療基金(Gesundheitsfond)は、疾病保険競争強化法によって2009年に創設された機関であり、法定疾病保険の保険料収入を一旦全て集約し、それに連邦補助を合わせた全体の資金を、性別や年齢、有病率などの指標に基づいてリスク構造調整を行った上で、各疾病金庫に配分する。6)Bundesministerium für Gesundheit, 健保連海外医療保障 No.13314い、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講じる、と規定しており、生殖補助医療に関する法規制は未だ整備できていないと言って良い状態である。生殖補助医療特例法の成立後3年が経過し、同法附則で挙げられた法整備が喫緊の課題となる中、生殖補助医療のあり方を考える超党派の議員連盟(会長・野田聖子衆議院議員)が、令和5年11月7日の総会で、第三者の精子や卵子を用いた生殖補助医療のルールを定める新法の制定を目指し、その骨子案をまとめた。今後各党での議論を経て、令和6年通常国会での法案提出を目指しているという。議論の推移が注目される。このように、日本においては生殖補助医療のあり方に関する法規制が未整備の状態である一方、費用負担については、令和4年度診療報酬改定によって、不妊治療の保険適用が行われることになった。以前より、不妊の原因探索および原因疾患の治療に対して保険適用されていたが、令和4年4月より、原因不明の不妊や治療が功を奏さないものについて、一般不妊治療(タイミング法・人工授精)および生殖補助医療(体外受精・顕微授精・男性不妊の手術)が保険適用となった。以上のように、日独両国ともに不妊治療に対する保険適用が行われるに至っているが、保険適用される技術に適応しない症状を抱えているケースでは、保険外治療を選択せざるを得ず、その場合は通常、全額自己負担となってしまう点が課題となる61)。保険が適用されるということは、使用される薬剤の効能や治療の有効性が十分に認められているということを意味するのであり、各疾患に応じて検査や治療内容等が決まっているため、その範囲内での治療等を行う必要がある。すなわち、保険適用される技術は安全かつ有用性の高いものだけであり、不妊治療に関して言えば、そのような治療パッケージで妊娠に繋がるのは不妊の原因が特定できておりその治療薬や治療法も確立している比較的軽度の不妊状態にあるカップルが多くなる。不妊の原因が明らかでない場合や原因が判明していても妊娠に繋げるために必要な薬剤や治療法が未承認のものである場合、その多くは保険適用される治療を既に受けたが効果が表れなかったケースであり、その場合どこかの段階で保険適用の道は諦めざるを得ない。そこに保険適用の限界があり、理論的には、社会保険としての医療保険の果たすべき役割とその限界を改めて再検討すべきフェーズに突入しているのではないかと思われる。日々新しい薬剤や治療法が開発されている生殖補助医療分野においては、ある治療薬や治療法が保険適用される頃には、既に新たな治療薬や治療法が開発されている、いわばイタチごっこが続く分野である。保険適用とすることが妥当だとしても、保険適用の決定に当たっては、その都度できるだけ早急に、しかも慎重に評価を行う必要があろう。

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