13健保連海外医療保障 No.133versicherungsfremdlast/fremdleistung(保険に無関係な負担/保険になじまない給付)をめぐる議論56)なども参考にしながら、国民を巻き込んだより根本的な検討が求められる。ドイツにおける生殖補助医療に関する法規制に特徴的なのは、非常に厳格な規制を及ぼしていること、連邦法レベルでは罰則付きの禁止事項について規定する刑事法としての規律のみであり、生殖補助医療についての包括的な法規制がないこと、それを補う形で、医師会ガイドラインによる詳細な規律がなされていること、連邦レベルの規制だけでなく州ごとに異なる規制が加えられていること、が挙げられる。また、胚保護法は、人間の尊厳や基本権が生命のどの時点から保障されるのかについて検討し、胚を生命の誕生と捉えることで胚の保護に関する法整備を行ってきた点も特徴的である57)。ドイツでは、生まれてくる子どもの福祉を最優先として制度設計がなされており、法律婚の場合以外にも、安定したパートナーシップで結ばれた共同生活を送る異性カップルを対象とし、妊娠を希望する女性以外の卵子の利用を禁止する。胚の移植は最大3個までに制限されているが、多胎妊娠の可能性は否定できない。しかし、予後良好と判断される場合には、単一胚移植が行われることが多くなり、単児妊娠・出産の割合が増加している58)。仮に多胎妊娠となった場合、上述したように、ドイツでは妊娠中絶に対して厳格に対応していることから、原則的には認められないが、妊婦の健康に危険を及ぼす可能性が高いと判断される場合には医学的社会的適用による中絶が認められる可能性もある59)。また、死後生殖および代理懐胎は禁止されるが、凍結配偶子・胚の利用および余剰胚の利用は禁止されておらず、着床前診断は法改正により条件を満たした場合に限り認められるに至っている60)。費用負担については、疾病保険からの給付と連邦および州による補助金が用意され、検査・投薬・外科治療に関しては疾病保険からの100%給付、いわゆる人工授精については費用の50%(回数制限なし)について疾病保険から、体外受精・顕微授精については3回まで50%を疾病保険から、連邦および州の助成金が4回まで最大25%負担する。しかし、不妊治療は必ずしも1度で成功するとは限らず、また、数度にわたってチャレンジしても必ず妊娠につながる保証はない。元々不妊治療にかかる費用は高額であり50〜75%の負担軽減がなされたとしても、妊娠に至るまでにかかる自己負担額は相当額に上る。費用負担の高さや適用基準の厳しさが課題となっている。一方、日本では、令和2年12月11日、「生殖補助医療の提供及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」(生殖補助医療特例法)が公布され、令和3年3月11日より施行された(第3章の生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の規律の特例については令和3年12月11日施行)。しかし、同法は、生殖補助医療の提供について具体的規制を行うものではなく、生殖補助医療によって出生した子の法的親子関係を確立するために必要な限りにおいて生殖補助医療について最低限の規定を設けたに過ぎない。実際、同法附則3条は、生殖補助医療の適切な提供等を確保するため、・ 生殖補助医療およびその提供に関する規制の在り方(1号)・ 生殖補助医療に用いられる精子、卵子または胚の提供(医療機関による供給も含む。)または、あっせんに関する規制(これらの適正なあっせんのための仕組みの整備を含む。)の在り方(2号)・ 他人の精子または卵子を用いた生殖補助医療の提供を受けた者、当該生殖補助医療に用いられた精子又は卵子の提供者および当該生殖補助医療により生まれた子に関する情報の保存及び管理、開示等に関する制度の在り方(3号)について、おおむね2年を目途として検討を行2. 生殖補助医療をめぐる課題
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