健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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11健保連海外医療保障 No.133ツに居住し、ドイツ国内にある生殖施設を利用する異性愛者の既婚・未婚カップルであり、SGBⅤ27a条に挙げられている条件、すなわち、① 不妊症の医学的判定が出ていること② 不妊治療の成功可能性が証明されていること③ パートナーの卵子と精子細胞だけを使用すること④ 事前の医学的および心理社会的相談を受けていること⑤ 女性の年齢は25歳以上40歳未満、男性の年齢は25歳以上50歳未満であることを満たしていることが必要となるが、各州が設定する資金調達ガイドラインの設計の違いにより、州によってはさらに制限が加えられる場合もある48)。助成金を受けるためには、治療開始前に、連邦助成・州助成ともに申請をする必要があり、州の管轄部局に所定の助成申請書を提出する。各州の設定する受給要件を満たした場合には、州により異なるが、最大4回までの体外受精および顕微授精について25%を上限に助成金が支給される(疾病金庫からの保険給付とは異なり、安定したパートナーシップを有する未婚のカップルも当該助成金の対象となるが、助成率は半分の12.5%となる。)。ドイツ刑法218条は、妊娠中絶について規定しており、妊娠を中絶した者は、3年以下の懲役または罰金に処するとし(1項)、妊婦も1年以下の懲役または罰金の処されると規定する(3項)。ただし、218a条に挙げられた免責事由に該当する場合には刑を免れ得る。免責される場合とは、①妊娠■藤相談を介した「相談適用」(Beratungsregelung)、②妊婦の健康に危険が及ぶ可能性が高いと判断された場合の「医学的社会的適用」(Medizinische Indikation)、③強姦などの「犯罪学的適用」(Kriminologische Indikation)である。「相談適用」とは、中絶処置の3日前までに、認可を受けている機関で妊娠■藤相談を受け、その証明書を提示することで中絶の施術を受けることができるものである(受胎後12週まで・同条1項)。「医学的社会的適用」とは、妊婦の現在および将来の生活状況を考慮し、妊婦の生命に関わるあるいは身体的または精神的健康に重大な障害をもたらすリスクがあり、その危険を回避するために医学的に中絶が必要であると判断された場合を指す(同条2項)。「犯罪学的適用」とは、性的虐待や性的暴行を受けたことによる妊娠であることが医師の診断により明らかな場合である(受胎後12週まで・同条3項)49)。219条は妊娠■藤相談について規定しているが、このカウンセリングは、「胎児の命を守るのに資するものであり、女性が妊娠を継続し子供との人生の展望を開くよう奨励する努力をすべきとされており、また、相談を通じて、胎児には妊娠などの段階においても生きる権利があること、法は中絶について女性に深刻かつ異常な負担を課す例外的な状況でのみ考慮されるとしていることを、女性に認識してもらう必要がある」としている。この規定からも、ドイツにおいては「妊娠中絶は罪であり原則として許されない行為である」という基本原則に立っていることが見て取れよう。ドイツにおける2021年の妊娠中絶総数は94,596件であり、10,000人に56人の割合で実施されている。年齢層としては、30歳以上35歳未満が最も多く23,187人、次いで18歳以上25歳未満が21,944人、25歳以上30歳未満21,154人と続いている。家族構成では、独身が55,059人と最も多いが、既婚者も35,961人と38%を占めている。理由別に見ると、相談適用によるものがほとんどであり(90,643件)、医学的社会的適用(3,903件)や犯罪学的適用(50件)によるものは約5%に過ぎない50)。妊娠中絶には、薬による中絶と外科的措置による中絶とがある。薬による中絶は、最終月経の初日から63日目まで実施可能な中絶方法である。外科的な中絶は、通常、全身麻酔または局Ⅳ. 人工妊娠中絶1. 妊娠中絶の法制度と実施状況

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