健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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諸外国における周産期医療・生殖補助医療と公的医療保障健保連海外医療保障 No.13310からの保険給付と連邦および州からの助成金による支援の2つが用意されている。不妊治療の費用についても、一般の療養の場合と同様、疾病保険適用対象の治療であれば、基本的には自己負担なしで受けることができるが、適用外の治療行為については、患者の自己負担となる。疾病保険の適用対象の治療であるか否かは、SGBⅤ27a条と92条1項10号に基づき連邦合同委員会が策定するガイドライン(Richtlinien des Bundesausschusses der Ärzte und Krankenkassen über ärztliche Maßnahmen zur künstlichen Befruchtung(„Richtlinien über künstliche Befruchtung“))に受給要件が定められている。SGBⅤ27a条は、不妊を理由とする人工的な受精のための措置に係る法定疾病保険の費用負担について定めている。同条によれば、医師が当該措置を必要(治療により妊娠を生じさせる合理的見通しがある)と認める場合において、治療を受ける男女が婚姻しており、本人の配偶子(精子および卵子)が用いられるときに、人工授精については無制限、体外受精・顕微授精については3回まで(ホルモン剤を使用しない場合8回まで)費用の50%を法定疾病保険が負担することとされている(1項)。ただし、女性は25歳以上40歳未満、男性は25歳以上50歳未満であることが条件とされており、治療を開始する前に、承認を得るために治療計画を疾病金庫に提出しなければならない(3項)。また、措置が実施される前に、医学的および心理社会的側面を考慮して、治療を直接担当しない医師から治療について説明を受けておく必要があり、当該医師によって生殖補助医療を行うことが認められている医師または施設に紹介されていなければならない。さらに、同条4項には、病気および生殖細胞損傷療法による治療のために医学的に凍結保存が必要と思われる場合、その後の医療措置を可能にするために、卵子、精子細胞または生殖細胞組織の凍結保存および関連する医療措置を受けることができる旨が規定されている47)。したがって、不妊検査や一般の保険診療と同様の投薬や外科治療などは保険適用となり、自己負担は発生しない。ただし、前述したように、他人の精子提供を受けて治療を行うこと自体は禁止されていないため広く行われているが、このような治療には疾病保険からの給付は行われず、全額自己負担で行う必要がある。また、疾病保険からの給付は、あくまで法律婚による異性カップルのみが対象であり、いわゆる事実婚を含むパートナーシップ関係にあるカップル等は、治療を受けること自体は可能であるが、その費用はあくまで自己負担となる。さらに、体外受精・顕微授精を受ける夫婦は、生殖補助医療に対する国の支援を申請することができる。財源は、連邦政府と州政府が共同で提供しており、助成金を受けるための条件は州ごとに異なり、財政援助額も州によって異なる。政府による財政援助は、「生殖補助医療対策を推進するための助成金付与に関する連邦家族・高齢者・女性・青少年省のガイドライン(Richtlinie des Bundesministeriums für Familie, Senioren, Frauen und Jugend über die Gewährung von Zuwendungen zur Förderung von Maßnahmen der assistierten Reproduktion)」を根拠とするが、同ガイドラインに従って連邦が資金提供するのは、州が少なくとも政府と同額の独自の州資金提供プログラムに参加することが条件となっている。現在、バイエルン州、ベルリン州、ブレーメン州、ヘッセン州、メクレンブルク=フォアポンメルン州、ニーダーザクセン州、ノルトライン=ヴェストファーレン州、ラインラント=プファルツ州、ザールラント州、ザクセン州、ザクセン=アンハルト州、テューリンゲン州の12州との間で協力協定が締結されている。上記ガイドラインに基づいて連邦および州から経済的支援を受けることができるのは、ドイ(1)疾病保険における保険給付(2)連邦および州による助成金

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