健保連海外医療保障_No.133_2024年3月
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9健保連海外医療保障 No.133これらは、自然妊娠を阻害している要因が、治療可能なものであり、環境を整えることで自然妊娠の可能性を高めようとするものである。周期モニタリングとは、超音波検査や血液検査を通じて女性の自然な月経周期を観察し、受精に最適な期間を算出することである。また、パートナーのホルモンバランスが乱れている場合には、薬の服用や体重管理を通じてホルモンバランスを正常化させ、自然受精を目指すあるいは必要に応じて人工授精への道を開くこともある。上記周期モニタリングやホルモン治療を行っても自然妊娠しない場合には、人工的な授精(生殖補助医療ART)という選択肢が検討される。ただし、生殖補助医療であっても受精の成功が保証されるものではない。現在の「赤ちゃんの持ち帰り」率(出生成功率)は、15%〜20%程度である。人工的な授精には、子宮内受精(人工授精)、体外受精(IVF)、卵細胞質内精子注入(ICSI)、精巣精子抽出(TESE)および精巣上体精子吸引(MESA)といった方法がある。男性の精子の数が少ない場合や運動性が不十分な場合には、精子細胞を直接子宮に注入する方法を取る。平均成功率は、1回の試行あたり約5〜10%であり、複数回の試行で約10〜30%の確率で妊娠が起こっている。② 体外受精(IVF)ホルモン治療後、女性の卵巣から卵細胞を取り出し、試験管内で男性の精子と混合させ、試験管内で受精が起こり、受精卵細胞が発育し続けることができたら、胚は子宮に戻される。体外受精は複雑なプロセスを要するため、胚を子宮に戻したとしても、常に子宮内に着床するわけではない。そこで、2・3個の胚が移植されることが多く、体外受精治療の20%で多胎妊娠に繋がっていると言われている。体外受精治療の成功率は、約25〜30%、生児出産率は15〜2)人工的な授精① 子宮内受精(人工授精)20%である。③ 卵細胞質内精子注入(ICSI)精子注入や体外受精の際に、精子の質により卵子が受精できない場合に用いられる特別な体外受精治療法である。顕微鏡で拡大視しながら、受精の手助けを行う方法で、顕微授精と呼ばれることもある。ICSIでは、ホルモン治療後に女性から卵細胞を取り出し、1つの精子細胞が卵細胞に直接注入され、受精と細胞分裂が成功すると、最大3個の胚を女性の子宮に移植する。④ 精巣精子抽出(TESE)および精巣上体精子男性の精液中に精子細胞が存在しない場合、外科的処置によって、精巣(TESE)または精巣上体(MESA)から直接精子を採取するもので、採取した精子を使ってICSI法を用いた治療を行うことが多い。不妊治療は長期にわたることも多く、極めてセンシティブな事柄であることから、当事者が負う身体的・心理的ストレスも大きい。そこで、検査や治療を行う前には、医師または心理社会カウンセリングセンターの専門家とオープンに話し合いを行う必要があり、自分たちの不安やニーズを専門家と共有しながら治療を継続していくことが望ましいとされており、不妊治療に際してカウンセラーが果たす役割は決して小さくない。また、治療が成功しなかった場合、子どもなしで生きていく決断をする夫婦もいるが、どうしても子どもが欲しいという場合には、養子縁組や里親養育によってその希望を実現する方法も存在する。ドイツにおいては、不妊治療の当初から一貫してカウンセリングセンターが関与しており、夫婦の置かれている状況や希望によっては、これらについての情報提供もしている46)。不妊治療に対する費用については、疾病保険吸引(MESA)3)カウンセリング4. 生殖補助医療の費用負担と経済的支援

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