67健保連海外医療保障 No.132予防接種被害補償専門委員会は、感染症予防法(第10条:委員会の構成)とその施行令(第7条:専門委員会の構成、第8条:専門委員会の会議および運営)に依拠して設置されており、そこでは主に、予防接種による被害の確認およびそれに対する補償、そして、被害補償の基準および方法と内容などを審議している。同委員会は25人程度の委員から構成され、委員の資格は上記の予防接種専門委員会と同様となっている。韓国で予防接種の被害に対する補償が明文化されたのは1994年の法改正である。当時、日本脳炎の予防接種による死亡事件が発生したことがその背景にあったとされる(疾病管理庁 2021:2;2022a:385)。同改正によって、予防接種による異常反応の場合、診療費の補償と死亡に対する一時補償金が支給されることとなった。当時の担当は予防接種委員会(現・予防接種専門委員会)であったが、2001年からは、「予防接種被害補償委員会」を新しく設置し、運営することとなり、2010年の法改正で現在の名称へと変更された。2003年には、「予防接種被害調査班」を新設した。同調査班では、迅速な検討が必要な死亡および重症の被害が認知された場合、あるいは集団的な異常反応が発生した場合、当該ワクチンの使用中止を判断し、食品医薬品安全処(食品と医薬品の安全な管理および運営にかかわる業務を行う国家行政機関)に再検討を依頼する。異常反応と予防接種との因果性の検討を通じて予防接種の持続可否を決定するなど、予防接種被害補償専門委員会の業務を支援している。最近は、委員会における円滑な審議のために、各分野別の専門的な事項を調査および分析し、諮問を行う「予防接種異常反応被害補償分野別諮問委員団」も設置している。予防接種被害補償専門委員会の活動とともに、2005年からネットを通じて異常反応を申告するサービスを導入したことに始まり、その後、さまざまなシステム開発やサービス導入を行ってきている。最近では、妊婦を対象に異常反応の発生を確認できるシステムを開発し、申告サービスによって把握された異常反応の頻度および動向を把握し、分析を行うことで、予防接種の安全性の確保を図っている。また、エビデンス・ベースドの疫学調査および被害調査業務を支援するために、国内外の学術文献検索システムを開発し、被害補償の申請内訳および結果照会のための被害補償申請管理システムを構築している。それとともに、この間、被害補償の申請期限を異常反応認知日から発生日へと変更(その日から5年以内、2013年)、予防接種の異常反応の治療費支援の上限回数を廃止(2014年)、また障害者福祉法や国民年金法などにおいて障害認定を受けた者に対しても障害者一時補償金を支給することができるように(2019年)するなど、補償の範囲や水準の拡大を図ってきている。感染症予防法(第23条:必須予防接種、第24条:臨時予防接種)にしたがって、予防接種を受けた者は、予防接種によって被害を受けたことが疑われた場合、被接種者およびその保護者が管轄の市・郡・区にその補償を申請することができる。申請は、市・郡・区の長を通じて市長および道知事に報告される。そこで予防接種による被害に対して基礎調査が行われ、その結果および意見書が疾病管理庁長に提出される。疾病管理庁長は、予防接種被害補償専門委員会の意見にしたがって、補償申請後の120日以内に補償可否を決定し、補償審議を完了することとなっている。補償が決定されると、市長および道知事から市・郡・区の長へという順で通報され、補償金が支給される。「予防接種被害国家補償手続き」と呼ばれるそのプロセスを示したのが図10である。関連して表8〜表10は、それぞれ補償金の種類、死亡一時補償金の金額の推移、予防接種被害の申請および補償実施の件数の推移を示したものである。上記以外に、予防接種と関連して多様な活動が行われている。たとえば、保健福祉部が中心(2)予防接種被害補償専門委員会4. その他
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