健保連海外医療保障_No.132_2023年9月
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---61健保連海外医療保障 No.132りに予防接種を受けなかった場合は、それに対応するための「未接種子どもの予防接種日程表」が提示される。なお、図4は、子ども国家予防接種支援事業の推進体制を示したものである。当該年度の小学校入学者(満4〜6歳時に行う追加接種)および中学校入学者(満11〜12歳時に行う追加接種)を対象として、予防接種を受けたか否かを確認する事業である。法的根拠は、感染症予防法(第31条:予防接種の管理可否の確認)と「学校保健法」(第10条:予防接種の完了可否の検査)である。2000〜01年に麻疹の大流行以降、「国家麻疹退治5か年計画」の一環として、小学校入学者を対象として実施したことが同事業の始まりとなった。2012年には教育部の「教育情報システム」(NEIS:National Education Information System)との連携を通じて、本人からの「予防接種証明書」の提出なしで予防履歴の確認ができるようになった。その後、生徒に対する感染症管理を強化するために、2012年から小学校入学時まで完了しなければならない予防接種の種類を4種(DTaP 第5次、IPV第4次、MMR第2次、日本脳炎不活性化ワクチン第4次あるいは生ワクチン第2次)まで拡大した。2017年には、満11〜12歳の追加予防接種2種(TdapあるいはTd、HPV(支援対象である女子に限る))に対してモデル事業を行い、2018年から全国の中学校入学者まで対象を拡大した。2020年からは、中学校入学者を対象に日本脳炎の予防接種を同事業の対象に含むようになっている。HPV国家予防接種事業は、満12〜17歳の女性および満18〜26歳の低所得女性を対象に、HPV(ヒトパピローマウイルス)予防接種の費用を支援する事業である。ここで「低所得」の基準は、国民基礎生活保障(日本の生活保護に当たる)の受給者および基準中位所得の50%以下の者を指す。満12歳の対象者に対しては、予防接種(2〜3回)の費用の他に健康相談サービスも提供される。健康相談サービスは国民健康保険の対象となり、自己負担分が国民健康保険公団から支給される。そのため、同事業の実施に関しては、感染症予防法(第24条:必須予防接種)とともに療養の給付の適用基準および方法に関する細部事項などが法的根拠となっている。HPVは、性的接触のある女性であれば、4人のうち2〜3人が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスである。また、15〜34歳の女性に発生するがんのうち、高い割合を占める子宮頸がんにおいて、HPV予防接種による予防率が90%以上を超えるとされる。こういった状況を背景に、2016年から同事業が実施されることとなった。当初は「女性健康第一歩クリニック事業」という名称であったのが、2022年から現在の名称へと変更されている。予防接種と健康相談サービスの基準は、年齢および接種内容などによって異なっている。その詳細をまとめたのが表5である。なお、図5は同事業の推進体制を示したものである。B型肝炎周産期予防事業は、B型肝炎表面第1次接種年齢接種回数ワクチン満12〜14歳2回満15〜25歳3回満15〜26歳出所: 疾病管理庁ホームページ(https://www.kdca.go.kr)および疾病管理庁(2023:79)をもとに筆者作成。次数接種間隔HPV2、HPV41次6〜12か月2次1次1か月HPV22次5か月3次1次2か月HPV42次4か月3次(3)小・中学校入学生予防接種確認事業(4)HPV国家予防接種事業(5)B型肝炎周産期予防事業表5 HPV国家予防接種事業の内容(予防接種)

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