諸外国における予防接種について健保連海外医療保障 No.13246れている権利と、患者や国民の権利や果たすべき責任についても示している29)。NHSが国民に約束する主な内容は以下の通りである。・ 国が承認した安全で清潔な一定水準以上の医療サービスを無料で受けられる・ GPを自由に選択し登録できる。GPは合理的理由がない限り登録を拒否できない・ 国民の医療ニーズを満たす医療サービスを提供する・ 患者に寄り添い、家族や介護者などとも協力する・提供される治療などを患者が拒否する権利・ NHS憲章ハンドブックで定められた待機期間を守る・ NHSによる医療サービスの提供にあたり、人種・性別・宗教・年齢・障害などで不当な差別をしない・予防接種や健康診断を提供する・ 医療に関する情報について知る権利とアクセスする権利・ 個人情報を保護し、患者が自身の医療情報にアクセスする権利・患者への説明責任・ 過失による治療で患者が損害を被った場合、補償を受ける権利・ 患者が苦情を申し立てる権利の保障および、その苦情を適切に処理する先述した原則に基づいた医療サービスの提供や、差別の禁止など常識的な内容も含まれている中、サービス提供の仕方についても示されている。特筆すべきは、患者にNHSに対して、治療を拒否する権利や異議・苦情を申し立てる権利を有することが明示されていることであろう。そして、NHSはそうした苦情に対して適切に調査することを約束し、患者はその調査内容を知り、結果について説明を受ける権利がある。患者や国民は、苦情に対してどのような措置が取られたのか、もしくは取ると提案されているのかも知る権利があるのである。また、その対応に満足いかない場合、独立した機関に苦情を申し立てる権利があること、NHSや地方自治体に非合法な行為があった場合の司法審査の請求権、医師の過失による治療で被害を被った場合には補償を受ける権利も明示されている。NHSや医師が不適切な対応をとった際に、申し出る機会が多くあることは日本とは異なる点である。NHSはそうした苦情への対応を行うことによって、同様の事案が再発することを回避し、サービス改善へと繋げることも宣言している。逆に、患者や国民が果たす責任も示されている。以下にその主な内容をあげる。・GPに登録すること・医療機関での暴力行為や迷惑行為の禁止・ 予約時間を守るか、それができない時は適切にキャンセルを行うこと・ NHSが効果的に機能するために、自身の健康状態に関する情報を適切に提供すること・ 同意した治療方針には従うこと。それが難しくなった場合は医師に相談すること・ 予防接種などの重要な公衆衛生サービスに参加すること・ 治療の経験について肯定・否定どちらの面からでも構わないので、フィードバックを出してほしい(治療によって受けた可能性のある副作用を含む)。フィードバックの機密は保持され、不利益をこうむることはなく、NHSサービスの向上につながるここでも常識的な内容から、健康情報を正確に伝えること、公衆衛生サービスに参加することなど、患者がすべきことが明示されている。実際の本文ではもっと具体的な内容が示されている。また、NHSから国民にフィードバックを求めており、それを基に今後のサービス改善に努めることが定められている。肯定的・否定的の両面からのフィードバックを基に、NHSは提供するサービスを改善することがわかる。むしろNHSはこうした患者からの申し立てを、自身がよりよく変わっていく機会と捉え、歓迎している。そうした仕組みも姿
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