諸外国における予防接種について健保連海外医療保障 No.13244権利について掘り下げる。1991年7月『市民憲章』が発表された。これは行政サービスに対し、市民に発言権を与えるものであった。その中では、「パブリック・サービスの6原理」が確立されたといわれている23)。6原理とは、①サービスに対する明確な基準の確立と、その基準に沿った実績の結果の公開、②行政コスト、適正なサービスの実施、責任者に関する正確な情報をわかりやすく提供する、③市民は行政サービスの選択に制限がある(市場で商品を選択するようには選べない)ので、実行可能な限り市民に選択の機会を提供し、さらに相談する権利を与える、④市民に対しては名札を付けて礼儀正しく、市民のために公平にサービスを提供する、⑤誤りがあった場合は、行政側から謝罪と十分な説明を行い修正する。そのために、市民が苦情を申し立てられる手続きとそれを審査する独立した制度を確立する、⑥サービスは国民の負担可能な範囲で行われ、その負担に見合う価値のあるものを提供する、の6つである。この『市民憲章』を受け、その医療版ともいえる『患者憲章』が1991年10月に発表された。これはNHSが提供するサービスの基準や、患者の権利を具体的に定めたものである24)。主な内容は以下の通りである。さらに、専門医の診療を受ける権利と別の医師の意見をきくことができる権利に加え、別の治療法の有無や治療に伴う危険性など明確な説明を受ける権利、サービスの水準や待機状況など詳しい情報を得られるという治療の透明性も1)すでに認められている基本的な権利ここでは、誰もがGPに登録でき、支払い能力にかかわらず必要とする医療サービスを受ける権利や、いつでも救急医療を受けられる権利といった、当然といえる権利が改めて明示されている。保障され、患者の立場に立った医療サービス提供体制が作られている。また、受けた医療サービスに対して不服や苦情があれば迅速に調査をしてもらい、その結果を管理責任者から文書で回答を受ける権利も掲げられており、患者の意見を重視する態勢をとることも明らかにされている25)。NHS誕生60周年となる2008年、ダージー■によって『High quality care for all: NHS Next Stage Review final report(NHSの新たな段階;すべての人に最高の質の医療を)』が発表され、新しい時代に対応するべく『NHS憲章』を策定することが提案されていた。そこでは患者の権利強化もとりあげられている。これまでも患者にはかなりの権利が法的に付与されていたが、様々な法や政策にわたっており、一部はよく知られていないものもあった。そうした権利の全てを『NHS憲章』にまとめ、患者がより積極的に権利を行使し発言しやすくすることで、患者のニーズにあったより質の高い医療が提供されやすくなることを目指している27)。『NHS憲章』は、NHSの原則や価値観をあらわしている。患者や人々、NHSスタッフに与えられている権利や、NHSが達成すると約束していること、果たすべき責任などが明記され、NHS関連機関およびNHSのサービスを提供す2)全国的に達成すべき水準と目標ここでは医療機関が守るべき内容が示されている。例として、患者のプライバシーや宗教、心情などを尊重すること、患者の家族や友人への必要な情報提供、救急車の到着時間や病院での待ち時間の目標設定、退院後の療養計画が決定するまでは退院させないこと、などがある。これらの基準には抽象的なものも含まれているが、基本的な権利同様、『患者憲章』に明記されることによって、ガイドラインに沿うかたちで医療サービスの提供が約束されることは国民にとって重要な意味を持つ26)。(2)NHS憲章の概要1. NHS憲章が掲げる権利と責任(1)市民憲章および患者憲章
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