諸外国における予防接種について健保連海外医療保障 No.13238でも受けることができる。Child Health ClinicはGPや訪問保健師で運営されている組織である。訪問保健師とは、正看護師もしくは助産師の免許を取得し、1年間の訪問保健師養成コースを修めた者のことをいう。この組織では出産したばかりの家庭に、red bookと呼ばれる新生児の健康記録帳(日本でいう母子手帳)を配布しており、各家庭で子どもの身長や体重、予防接種、その他病気や事故、薬による副作用などを記録してもらうことで、定期的に行われる訪問保健師による面談検査の際の資料としている。義務教育の学齢に達した子どもへの予防接種は、NHSイングランドの7つの地域チームによって管理される、School Age Immunisation Services (=学齢期予防接種サービス:以下SAIS)が実施する。SAISは学校をベースにした予防接種プログラムを提供する法的責任を負っている。ここでいう「学校」とは通常の小中学校などだけではなく、自宅学習をしている子ども(ホームスクール)やその他の学校(フリースクールなども含む)に通っている子どもも対象になっている。SAISは学校看護師や学校とも連携して、予防接種プログラムを実施する。それ以降の成人を対象とした定期予防接種は、主にGPで接種することができる7)。イギリスにおいても、予防接種は義務化されていない。しかし、接種を促すため、その重要性を様々な組織が積極的に周知したり、接種を促す取り組みをしている。通常、新生児から就学前児童までの期間の予防接種は、登録しているGPに予約をして接種を受けることになる。接種を忘れないように、定期予防接種の時期が近づくと自身のGPから手紙や電話、Eメールなどで連絡が来るようになっている。また、保護者は接種時期が近付いたことに気づいた際、GPからの連絡が来る前に予約を行うこともできる。保護者はGPに対して、接種するワクチンの情報や、接種をし忘れた際の対応、接種を控えた方がいい場合など、様々な疑問点を相談することもできる。前項で述べたように、保護者は訪問保健師による面談検査の際にも新生児の健康相談をすることができ、予防接種についての情報も得ることができる。訪問保健師の最初の面談検査は、出生後10〜14日の間に行われ、主に新生児の健康状態や成長、育児について話し合われる。その後、特に健康上の問題がなければ、体重計測とともに検査や相談が生後6か月までは毎月1回、それ以降12か月までは2か月に1回、12か月以降は3か月に1回行われる。その際、8週目、12週目、16週目、12か月目が含まれる面談検査と就学前までの間は、予防接種についても話し合われ、接種に必要な情報提供や接種の勧奨がなされる。学齢期での予防接種はSAISによって、学校で接種の機会が設けられる。その際、接種対象者の保護者に対してワクチンに関する情報提供を行い、十分情報を得た上で広く同意が得られるよう努めている。その上で保護者に予防接種の案内を送付し、同意するか否かを問い合わせる。返事の締切は、SAISによる予防接種が学校で行われる48時間前までと設定されており、予防接種に対してさらなる説明を求める保護者へは、訪問保健師や学校看護師、GPと話す機会が設けられる8)。それ以降の年齢の予防接種については、各々が接種資格を得る年齢に達した際に、自身のGPなどから案内が送られてくることとなっている。このようにNHSでは、新生児や乳幼児、若年層の予防接種にできる限り同意してもらうべく、様々なアプローチで接触、情報提供を行っている。もちろん、NHSやイギリス政府のウェブサイトでは、次項で紹介する各種の予防接種について、その意義や安全性、効果および副作用や稀に起こるアレルギー反応、接種すべきではない者(ワクチンに対するアレルギーがある、接種当日に発熱しているなど)、といった接種に際して必要な情報を詳しく説明している。た(2) 予防接種の実施とその情報提供、重要性の周知
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