注1) Fischer (2016:11-13)において、予防接種あるいはワクチンに対する不信の原因が分析されている。本文中のいくつかの原因の説明はこの分析に基づく。健保連海外医療保障 No.132ンスでは、多様な医療専門職(助産師、看護師、薬剤師)が一定の条件下でワクチンの処方と投与を行うことができるよう、必要な法整備が行われている。これによって、今後、市民が予防接種を受ける機会が広がり、接種率が向上することが期待される。医師の不足や偏在が問題となるなかで、予防接種にかかわる医療専門職の権限の拡大が予防接種制度、さらには医療保障システムにどのような影響を与えるのか、今後の政策動向にも注目していきたい。2) Loi n° 2002-303 du 4 mars 2002 relative aux droits des malades et à la qualité du système de santé.3) Loi n° 2004-806 du 9 août 2004 relative à la politique de santé publique.4) Loi n° 2017-1836 du 30 décembre 2017 de financement de la sécurité sociale pour 2018.5) 2018年社会保障財政法の49条により、従来の3つの感染症に対する予防接種の義務について定めていた公衆衛生法典のL3111-2条とL3111-3条が大幅に変更され、新たなL3111-2条に11種類の義務の対象となる予防接種が定められた。6) 11種類の予防接種の対象者の年齢は国務院のデクレ(Décret n° 2018-42 du 25 janvier 2018 relatif à la vaccination obligatoire)により、公衆衛生法典R.3111-2として定められた。7) Projet de loi de financement de la sécurité sociale pour 2018.8) 公衆衛生法典L3116-4条により、親権者による児童の予防接種義務の拒否や義務履行の妨害に対して、懲役6か月と3,750ユーロの罰金が科されることが定められていた。9) 2018年社会保障財政法案の第34条の提案理由にも、「予防接種の拒否に対する特別の制裁措置は廃止する。児童の利益侵害に関する刑法典の一般犯罪の規定のみ存続する」と説明されている。3310) HASのウェブサイト(https://www.has-sante.fr/jcms/c_452559/fr/la-has-en-bref 2323年6月24日閲覧)による。11) Loi n° 2017-220 du 23 février 2017 ratifiant lʼordonnance n° 2016-966 du 15 juillet 2016 portant simplification de procédures mises en œuvre par lʼAgence nationale de sécurité du médicament et des produits de santé et comportant diverses dispositions relatives aux produits de santé.12) 今日の予防接種政策においてHASが担っている役割は、それまでは、公衆衛生高等会議(Haut conseil de santé publique)の予防接種技術委員(comité technique des vaccinations)により担われていた。13) 予防接種技術委員会の構成はHASのウェブサイトで公表されている(https://www.has-sante.fr/jcms/c_2755844/fr/commission-technique-des-vaccinations 2023年6月24日閲覧)。2023年6月現在、委員長(1名)と副委員長(3名)のもと、多様な専門分野の25名の委員により構成されている。14) 具体的な流れは、service-publicのウェブサイト(Saisir la commission(CCI)en cas dʼaccident médical, infection nosocomiale ...)(https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F13318 2023年6月24日閲覧)を参照。15) 「予防接種スケジュールとワクチンの推奨 2023」の百日咳についての説明による(Ministère de la Santé et de la Prévention 2023:8)。16) 予防接種センターや母子保護センターで実施されている予防接種は、全国的にみると、毎年実施されている予防接種の5分の1未満でしかなく、大部分の予防接種は開業医により行われている(Ministère des Affaires Sociales et de la Santé 2012:9)。17) フランスでは、社会保障の一般制度(régime général)と呼ばれる総合的な社会保険制度が存在し、人口の約9割は一般制度の一部門として実施される医療保険にカバーされている。本稿ではこの一般制度の医療保険を対象として検討を行う。18) HASのウェブサイト(Vaccination)(https://www.has-sante.fr/jcms/c_2742985/fr/vaccination 2023年6月17日閲覧)による。
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