健保連海外医療保障_No.132_2023年9月
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11健保連海外医療保障 No.132内訳は、2歳未満が22%、2歳以上18歳未満が37%、18歳以上48歳未満が38%、48歳以上が3%であり、18歳以上48歳未満のグループ(すなわち、1971年以降に生まれた者)においても免疫が十分でないことが示されていた。また、疾病金庫の記録を調べたところ、18歳以上29歳以下の者の麻しん予防接種の接種率は約80%、30歳以上39歳以下の者においては47%、40歳以上49歳以下の者においては25%であった。(この調査で接種済みとカウントした者には、予防接種を1回しか受けていない者も含まれる。)このような状況を背景に2020年の麻しん防護法により感染症防護法が改正され64)、児童等に対して麻しんの予防接種を義務付ける規定(第20条第8項〜第13項)が設けられた(2020年3月1日施行)。予防接種を義務付けられたのは、1971年以降に生まれた以下の者である(同条第8項)。① 満1歳以上で、保育園に通園または学校に通学しようとする者② ホーム(Heime)に入所している者(入所から4週間以内)③ 難民収容施設に入所している者(入所から4週間以内)④ ①〜③の施設および医療機関における従業員上記の者は、接種手帳(Impfnachweis)または医師による麻しん罹患証明書を各施設・医療機関の長に提出しなければならない。ただし、医療上の忌避を理由として接種を受けることができない者には、接種義務は課されない(同条第9項)。子に予防接種を受けさせない親、ならびに予防接種を受けない施設入所者および各施設・医療機関の従業員には、2,500ユーロ以下の過料が課される(第73条)。予防接種を受けていない子の親には過料が科されるが、就学義務もあるため、子は、接種を受けていなくても学校に通うことができる。これと異なり、接種を受けない各施設・医療機関の従業員は、予防接種を受けなければ当該施設・医療機関において引き続き従事することができない。COVID-19が感染拡大する中、予防接種を義務化すべきかどうか、報道等において議論が沸いた。ドイツにおいてはワクチンに懐疑的な者も多く、2021年10月31日の接種率は、1回目接種が70.5%、2回目接種が66.4%、3回目接種が2.6%であり65)、接種率が伸び悩んでいた。2021年12月8日に連邦首相に就いたショルツ氏(Olaf Scholz. 社会民主党SPD)は、1回目の接種率を80%程度に引き上げるために、18歳以上の者に対する一般的な接種義務(allgemeine Impfpflicht)を導入することを再三表明したが、基本権を侵害する可能性があること、また、連立与党間(SPD・緑の党・自由民主党FDP)の調整に時間がかかることから導入をあきらめた66)。そのような中、対象者の範囲を狭め、医療機関や介護施設の従業員等に対して予防接種を義務付けるため(einrichtungsbezogene Impfpflicht)、2021年末に感染症防護法に第20a条が新設され67)、2021年12月12日から施行された。これは、COVID-19に感染すると重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患を有する者を保護するために、これらの施設従業員の接種率を高めることが非常に重要であるとの認識によるものである68)。なお、第20a条は2023年1月1日をもって廃止されている。以下では、第20a条がどのような規定であったか、その概要を紹介する。対象者は、医療機関や介護施設の従業員等である(ただし、医療上の禁忌を理由として予防接種を受けることができない者はこの限りでない)。これらの者は、2022年3月15日までに、施設長等に対して、接種証明書または既感染証明書を提出しなければならない。施設長は、期限までにこれらの証明書を提出しなかった従業員または証明書の真正性に疑いがある従業員について保健所に報告しなければならず、当該従業員の個人情報を保健所に送付しなければならない。保健所は、当該従業員が当該施設において勤務することまたは施設に立ち入ることを禁4. COVID-19の予防接種

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