薬局・薬剤師に求められる役割健保連海外医療保障 No.13162022年末までの薬価凍結となった。2018年7月1日以降は、毎年7月1日付でインフレに応じた価格変更が認められている12)。2021年12月に発足した新政権は、薬価凍結を2026年末まで再度延長した。医薬分業は、神聖ローマ帝国皇帝兼シチリア王であったフリードリヒ2世(1194-1250)が1231年から1241年の間に編纂した法典に明文化された13)。医薬分業はその後今日に至るまで医療関係法の基本となっている14)。フリードリヒ2世の制定した医薬分業法には医師と薬剤師の分離: −医師は薬局を所有をしてはならない − 医師と薬剤師が利益共同体であってはならないの他いくつかの条文があり、薬価も同法により導入された。皇帝は毒殺を恐れこのような法律を制定したともいわれている15)。上記の法律内容から見て取れることは、医薬分業というのは、医師も薬剤師も医薬品で利潤を得ることのみを考えてはいけないという法律である。医師が診断だけでなく医薬品も販売できれば、より多くの利潤を得るため、患者に過剰な医薬品を販売する可能性が生まれる。診断のできない薬剤師が医師の処方なく医薬品を販売してよいならば、患者の疾患に不適切な医薬品や、やはり利潤を得る目的で不必要な医薬品出所: https://www.briefmarken-bilder.de/brd-briefmarken-1991/apotheker-750を患者に勧め販売する可能性が生まれる。薬物治療を適切に行い、医師と薬剤師の不適切・不必要な医薬品販売による営利追求の可能性を排除するのが医薬分業である。「医療は非営利で」という言葉があるが、これを実践する基本法が医薬分業であり、ただ単に医師と薬剤師の職業を分離・独立させたということではない。薬剤師にのみ薬局開設・経営が許可されているドイツでは16)、国民医療において処方に基づき患者に医薬品を販売できるのは薬局だけであり、調剤権のない医師が医薬品を直接患者に渡すことを認めていない17)。例外として、メーカーから受け取った医薬品サンプルを渡すことはあるが、これも数が制限されているうえ、非売品と表記され薬局や病院薬局で扱える箱サイズとは異なっている。また、医師が薬局を通さず医薬品を入手することも認めていない。ワクチンなどの予防接種用医薬品も薬局がメーカーや医薬品総合卸から購入したものを医院・病院へ供給している。医薬品の供給経路は非常にシンプルであり中間業者が入ることは非常に稀である。医薬品を含め薬局で販売できる製品のほとんどが直接メーカーか、医薬品総合卸から仕入れたものである。公的医療保険が薬剤費償還するということもあって薬価が定められているが、薬価には大変重要な意味がある。もし薬価がなく、需要と供給の関係で薬価が高騰したり暴落したりすれば、メーカーは生産計画を立てるのが困難になり、薬局や医薬品総合卸は在庫を置かなくなったり医薬品が投機に利用されたりして、医薬品の安全・安定供給に大きな支障がでる。医薬品なくして医療は成り立たたず、必要な医薬品が不足すれば国民の健康や生命が脅かされる。有事の際、患者に「あなたの命を救える医薬品の在庫が当薬局にはまだあります。売ってあげてもいいですが、いくら払えますか?」ということが図6 ドイツの記念切手 薬剤師750年1. 現在のドイツにおける医薬分業2. 薬価の大切さⅡ. 医薬分業
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