健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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5出所:https://erezept-bayern.de/erezept/健保連海外医療保障 No.131望する薬局へ直接送ることも可能である。これまでの処方箋のように1枚に3品目処方でき、4品目以上の処方となると複数の処方箋が必要となる。電子処方箋の導入に伴い、レフィル処方も導入される予定であったが現在中止となっている。専門家と薬剤師による予想では、電子処方箋の浸透率は2023年ではまだ低いとの見方で、交付される処方箋の87%が従来のA6サイズ処方箋発行になるとの試算が出ている11)。Festbetragと呼ばれ、成分もしくは成分グループごとに保険償還限度価格が定められる。日本では参照価格とも呼ばれている。成分グループで償還限度価格が定められている場合、特許切れでなくとも、新薬であっても、その価格が償還限度価格を超えていれば、全額償還とはならず、差額を患者が負担しなければならない。メーカーと各疾病金庫が結ぶ契約で、1処方箱あたりメーカーがどれだけ保険に対して価格割引するかを定めるものである。この割引制度により、保険医が同じ医薬品を処方しても、患者の加入疾病金庫により薬局が手渡せる製品が違ってくる場合がある。薬局では、加入者の疾病金庫が契約しているメーカーの製品を渡す義務がある。通常、2年ごとの契約更新もしくは他社との新契約となる。同じ医薬品でメーカーが違うだけであると説明しても、パッケージや錠剤の形、大きさ、色が変わると、困惑する患者も多く、薬局スタッフは対応に苦慮している。この制度により、同じ医薬品でも数社の製品を在庫としておかねばならず、在庫管理上好ましくない。同制度では、大手疾病金庫との契約が結べるか否かで、メーカーの生産数ならびに販売数は大きく変化する。給付業務を行う公的医療保険の最大手は一般地域疾病金庫(AOK)で、被保険者の約37%がこの一般地域疾病金庫(AOK)に加入している。契約するメーカーが何らかの理由で供給不全に陥いると、同等製品を生産する他社が不足分をカバーできない場合がある。コロナ禍で成分原末の製造と輸送が需要に追い付いていない、燃料・電気料金の高騰などの理由で、医薬品不足問題は2022年に入り、これまでにない深刻さであり、年が変わった2023年も状況は好転していない。薬局へは2022年夏以降、乳児・小児用の解熱鎮痛剤がほとんど入荷しておらず、抗菌剤も不足している。プライス・モラトリウム(Preismoratorium)と呼ばれ、メーカーの値上げを阻止し、薬価を凍結する法律である。要処方箋医薬品の場合、メーカーが出荷価格を決めると自動的に薬局販売価格が決まる価格算定方式になっている。メーカー出荷価格に卸の利潤、薬局の利潤と夜勤手当ファンドに集められる報酬を乗せ、19%の付加価値税を加算したものが薬局販売価格であり、透明性のある価格設定である。この薬局販売価格が償還限度価格以下である場合に保険が全額償還する。同法律が成立する以前は、メーカーの値上げを認めていたわけであるが、償還限度価格のない医薬品の著しい値上げを阻止し、償還薬剤費を抑制するための価格操作ツールとして同法は2010年8月1日に施行され、(3)薬価モラル図5 電子処方箋見本(1)償還限度価格(参照価格)(2)割引制度(Rabattvertrag)7. 処方箋業務に影響する薬価政策:償還限度価格、割引制度と薬価モラル保険償還する薬剤費を抑え、保険財政を安定させる目的で薬価には3つの枷をはめている。

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