健保連海外医療保障_No.131_2023年3月
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67高額費用カバレッジの段階初期カバレッジの段階保険免責保険プラン加入者保険プラン出所: Howard Deutsch et al., ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(Nov. 16, 2022)をもとに筆者作成。健保連海外医療保障 No.13120%20%25%25%10%製薬会社メディケア60%65%100%100%加入者自己負担額の上限(2,000ドル)保険免責額(505ドル)費用カバレッジの段階に到達するまで医薬品を購入しており、その自己負担の総額は18億ドルとなっていた44)。インフレ抑制法による改革により、2025年よりパートDの処方薬剤給付は次のように再編される(図2を参照)。まず初期カバレッジの段階では、保険プランが薬剤費の65%をカバーする給付を行い、製薬会社はブランド医薬品について10%の割引を行う。加入者の自己負担は、これまでと同様に薬剤費の25%である(カバレッジギャップは廃止される)。次に、加入者の自己負担には限度額が設定される。薬剤費の自己負担額の年間総額が2,000ドルに達した場合(2025年時点)、高額費用カバレッジが適用され、それ以降、加入者の自己負担は生じない。高額費用カバレッジ段階におけるメディケアの給付率は、ブランド医薬品の場合20%、ジェネリック医薬品の場合には40%となる。保険プランの給付率は、ブランド医薬品とジェネリック医薬品のいずれにおいても60%となる。ブランド医薬品については製薬会社が残りの20%相当分について割引を行うことが求められる。加入者に2,000ドルの自己負担限度額が設定されることにより、がんや多発性硬化症などにより高額な薬剤を服用する加入者にとっては大幅な負担軽減が実現する。他方で、保険プラン側の負担が増大するため、保険料が上昇する可能性がある。このため、改正法では、2024年から2030年までパートD保険料の上昇を前年比で6%以内に抑制することを予定している。今回の改革では、糖尿病患者が利用するインスリン製剤の費用負担についても軽減が図られた。パートDの多くの保険プランでは、インスリン製剤を優先医薬品に位置づけており、この場合、初期カバレッジ段階では加入者の負担は1処方箋あたり月額47ドルであった(2019年時点での平均的な額)。しかし、保険プラン加入者の薬剤費総額がカバレッジギャップ段階に達するまで増加すると、加入者が低所得者補助(LIS)の受給資格をもたない限り、費用の25%を加入者自身で負担しなければならない状態となっていた。これは、インスリン製剤を利用する加入者にとって1処方箋あたり100ドル以上の負担に相当するものとなっていた。このような経済的負担を軽減するため、パートDでは、糖尿病患者のニーズに対応した保険プランが提供されていた(Innovation Center Model)。加入者がこのタイプの保険プランを選択した場合、薬剤費がカバレッジギャップの段階になるまで毎月35ドルの自己負担でインスリン製剤を入手することが可能であった。今回の改革は、このような負担水準をパートDのすべての保険プランやパートBにおいて実現しようとするものであり、2023年1月1日より施行されている。パートDの保険プランやパートBでカバーされるすべてのインスリン製剤について加入者負担の限度額を月額35ドルとし、保険免責は適用されない。2020年の時点でパー(4) パートD加入者のインスリンの自己負担の軽減図2 2025年からのパートDの薬剤給付

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